マツダMX-30で1800キロ走って見えたもの
マツダは現在第7世代プラットフォーム戦略の最中にいる。俯瞰(ふかん)的に見れば、基本シャシーはスモールとラージの2種類がある。スモールは、Mazda3、CX-30、MX-30の3台で構成されており、Mazda2とCX-3は第6世代で1世代古い。 【写真】フリースタイルドアを持つMX-30 2021年中にはラージプラットフォームがスタートする予定で、こちらはMazda6、CX-5、CX-8で構成される。ラージについては、本来20年中にはデビューする予定だったが、CASE対応をにらんで……というだけでは茫漠(ぼうばく)としているので、もっと明瞭にいえば、ラージプラットフォームの世代がそのライフタイム中に回避することのできない電動化を見据え、バッテリー搭載とマネージメントにおける技術のブラッシュアップのために、開発をやり直した。 ぶっちゃけて言えば、MX-30のEVモデルをやってみて、そのあたりの技術に未消化な部分があったことが表面化し、ラージプラットフォームの根幹からやり直さざるを得なくなった。マツダには少し気の毒だが、はっきり言い切ってしまえば、バッテリーの技術が無かったことが原因だ。 さて、マツダは第6世代からコモンアーキテクチャーによるクルマ作りを進めてきた。商品群全体を串刺しにする基礎技術と、車種ごとの個性を創出する技術に分けて、それぞれを「固定と変動」と定義した。 コンピュータでいえば、OSとアプリケーションのようなもので、まず人と金をOS部分に結集して、商品群全体の基礎能力を持ち上げ、そこに各車ごとの個性化技術を投入し、コストダウン、信頼性向上、走行性能、品質の全てを引き上げるという大胆な構想だった。 その中にはデザインも含まれており、現状グローバルで年間150万台規模程度しかないマツダが、マーケットで埋没しないように、デザインについてもコモンアーキテクチャーを推進して、モチーフを共通化したのだ。 デザインについては「どれもこれも同じじゃないか?」という批判はあるが、それ以前に、車種毎に別々のモチーフを用意して、リソース不足の中で、疲弊しながら完成度の低いデザインを送り出すよりも、エースデザイナーが全体に共通するモチーフを明確に定義して、オールマツダの商品群として、マーケットで存在感を打ち出そうとした。 自ら弱者であることを認識した上で、マツダの実力に見合った戦略を打ち出すことを最優先した。それが「魂動デザイン」である。