『ホンジャマカ』石塚英彦が明かす、あまり知られていない「″まいうー″のルーツと意味」
″うまい″ではなく″ありがとう″
みなさん、ごきげんよう。どんなに嬉しいことがあっても急にスキップをすると、膝をやられますよ。石塚英彦です。 「本業は食レポだけど、相方ともう一回コントがしたい」石塚英彦が本音で語る″ホンジャマカの未来″ 今回のテーマは、「まいうー」についてです。まず、「まいうー」という言葉はいつ生まれたのか。実は、私やパパイヤ鈴木さんがつくった言葉ではありません。そのルーツは昔の芸能界、つまり「業界用語」なのです。 以前、ドラマの撮影で事務所の大先輩であるミッキー・カーチスさんとご一緒させていただいた際にお昼ご飯をご馳走になりました。私が料理を一口食べて「まいうー」と言うと、ミッキーさんが、「懐かしいね~」と笑ってらっしゃったのを思い出します。 なんと私は、「まいうー」の師匠ともいえる人の前で、「まいうー」と言ってしまったのです。それはまるで、手塚治虫先生の前で「漫画とは何か」について語るようなもの。顔が赤くなりました。タクシーをシータク。すしをシースー。ホテルをテルホー。業界用語について詳しく知りたい方は、中山秀征に聞いてください。 次に、私やパパイヤ鈴木さんが、「まいうー」を使うようになったきっかけについてです。 ずいぶん前にやっていたテレビ番組内のワンコーナーで、私とパパイヤさんとカワイ麻弓さんの3人が共演したことがありました。そこで、生意気な芸能人という設定のカワイさんが「まいうー」という言葉を使いました。その後も3人で盛り上がり、何か食べては「まいうー」と言うようになりました。 その頃は単に「うまい」という意味で「まいうー」を使っていたのですが、グルメレポーターを長くやらせていただくうちに、私の中で「まいうー」の意味が変わっていきました。本当に「おいしい」ときに「まいうー」という言葉を使うのですが、それだけではなくなってきました。 というのも、グルメレポーターの仕事では飲食店そのものに行かせていただくことが多いのですが、そこに至るまでの食材の生産者への取材もあります。その中で、生産者の方々のご苦労を知ることとなりました。米で言えば、田植えから収穫。テレビ撮影なのでほんの数時間の体験でしたが、それでも私は汗だくになり、軽く腰を痛めました。 機械で作業できる田んぼもありますが、田んぼ全体が狭くて山の斜面にある場合は、すべて手で植えて、手で収穫となります。それは、おばあちゃんの腰も曲がるというものです。野菜や果物も、毎日、莫大な数の作物を目でチェックし、ひとつひとつ手で収穫しているのです。 漁港へも行かせていただきました。薄暗い早朝に出港し、信じられない揺れの中で網を揚げ、魚を網から外して選別。静かな港では、笑顔の奥様方が男たちの帰りを出迎える。毎日が命がけなのです。 牛や豚、鳥を育てるのも大変です。研究に研究を重ねて最適なエサを作り出し、運動させる。中には、リラックスさせるために音楽を流している農家さんもいらっしゃいました。 聞けば、農家のみなさんも、漁師のみなさんも、「しばらく旅行に行っていないなあ」と言う方が多い。そういった方々の命がけの作品を使って、料理人も命がけで最高の一品を作ります。多くのみなさんのご苦労や努力を知ると、「まいうー」は単に「うまい」ではなく、「ありがとう」となるのです。 みなさんも食事をいただく時は、感謝の気持ちを忘れずに。「まいうー」は、「ありがとう」。サイン色紙は、「感謝状」なのです。 『FRIDAY』2024年12月13,20日合併号より 文・イラスト:石塚英彦 ’62年、神奈川県生まれ。恵俊彰とのコンビ「ホンジャマカ」で活動、「元祖!でぶや」(テレ東系)などのバラエティに加え俳優や声優としても活躍。現在、「よじごじDays」(テレ東系)の金曜MCとして出演のほか、YouTubeやInstagramにも注力している
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