『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』…になるにはどうすればいい?note発人気作家岸田奈美が語る、家族と文章の話
最近話題のメディアプラットフォーム「note」から、素敵な文章やカルチャーが多数生まれています。その中で注目されているのが、作家の岸田奈美さん。noteに投稿したエッセイが何度も反響を呼び話題を集めました。 そんな岸田さんの初単行本『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』は9月23日の発売以来、何度も重版を重ねる人気ぶり。 うちだけじゃない。「家族のグループLINEあるある」がぶっ飛んでる! CanCam.jpではスペシャルインタビューを敢行しました。文章の話、世界を面白く見るコツ、そして、家族を愛したいのに愛せないとき、岸田さんのように「愛したのが家族だった」になるためにはどうしたらいいのか…岸田さんの目を通して見る世界、早速見ていきましょう。
Q.どのエッセイも非常に素敵なのですが、人生で起きる数多くの出来事の中から「これを書こう!」とどのように決めていますか? 「数か月前までは、『これまでの人生の中で、居酒屋などで話して、ウケた話から書いていこう』という順で書いていました(笑)。この『ウケる』はただ面白いだけじゃなくて、泣ける話や人が親身になって聞いてくれた話もあるんですが、とにかく人の感情が大きく動いて刺さったことから書いていました。だから前までは過去の話が多かったんです。今回の本は、そんな今までのエッセイの中から書籍の担当編集さんが情熱を持って選んでくれたお話が多数収録されています。 今はかつてとは少し変わって、私がマネジメントをお任せしているクリエイターエージェンシー・コルクの信頼できる編集者の佐渡島さんに、日々あったことをとにかくたくさん話す中から『じゃあこれを書いていこうか』と決めています」 Q.日頃、文章を書くために心がけていることは? 「とにかく『受信癖』をつけることです」 ▼線を引きながら本を読む 「作家として独立してから、かなり本を買って読むようになりました。会社員時代は月3冊ほどでしたが、フリーになってからは月3万円くらい買って、いいなと思った文章に、30色は持っている蛍光ペンで線を引きながら読んでいます。ただ線を引くだけではなく、たまに、線を引いた文章をパソコンに打って書き写しています。言葉は使えば使うほど自分のものになっていきますし、大人になっても赤ちゃんと一緒で知っている言葉じゃないと使えないんです。素敵だと思った文章を自分で打ってみることで、言葉の出し方を自分の体に覚えこませています」 ▼スマホのメモを習慣にする 「インスタグラムを始めるとかわいい写真を撮るのが習慣になるように、私は気になった言葉をメモすることで言葉に気を配ることを習慣にしました。何をメモするかは多岐にわたっていて、たとえば本や誰かの言葉で気になった言葉を書きとめたり、自分の中でふと思い浮かんだ言葉をメモしたり…。今までだったら流してしまっていた言葉に気がいくようになりますよ」 ▼たとえグセをつける 「『ヤバい』と思ったことを伝えたいときに『胸が張り裂けそうなほどつらい』とか、そういった言葉はもう使い尽くされているので、違う言葉を探します。先日糸井重里さんにお会いする機会があったんですが、今更言うまでもないことですが、文章が本当にめちゃめちゃうまいですし、言葉の使い方をものすごく意識している。 たとえば私が『これおいしいですね』と言ったら『おいしいという言葉の価値が下がるからその言葉を使ってはダメ、おいしい以外の言葉を使っておいしいを表現しなさい』と言われたり…。何かを表現したいときに、とにかく意識的に他の言葉でたとえることを訓練しています」