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優しさ(6月2日)

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福島民報

 伝説のミュージシャンと呼ぶにふさわしい。音楽グループ「JAGATARA(じゃがたら)」の男性ボーカル・江戸アケミさんは三十年前の冬、自宅の風呂で溺れ、命を落とした。三十六歳の訃報に、ファンは言葉を失った。  ロックにジャズ、ファンク、レゲエ、アフロといった黒人音楽を混ぜ込んだ独特の世界を築いた。耳にすると、自然に体が動きだす。渋谷、芝浦など都内のライブハウスで催す公演は夜遅くまで続いた。ひたすら踊り、日常を忘れる。せわしない都会の楽園と言えた。  江戸さんは精神を病み、活動を休んだ時期がある。気持ちが清らかすぎ、社会と折り合えないのだろう。そう見る人がいた。時はバブル経済の真っただ中。♪スピードもっとゆっくり急げ-。心が渇き、焦りに駆られる若者にメッセージを送った。人を思う優しさを秘めていた。  令和となった今、目の前に寒々とした風景が広がる。新型コロナの感染拡大で、差別や偏見が生まれている。自殺したとみられる女子プロレスラーはネットで中傷を受けていた。♪日々の暮らしには辛抱が 大切だから 心のもちようさ-。「アケちゃん」と慕われたロッカーの声が温かく響く。

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