『ちむどんどん』ニーニーが嫌われるのは竜星涼の役者冥利 “元”ヒーローたちの活躍に注目
沖縄・やんばる地域で生まれ育った四兄妹の歩みを描く、NHK連続テレビ小説『ちむどんどん』。「朝からイライラする!」「ダメニーニーだ……」と、視聴者をざわつかせている比嘉家の長男・賢秀を演じているのが、竜星涼だ。 【写真】ゴーカイブルーを演じていた山田裕貴 賢秀は自由奔放で素行が悪く、家族のために数々の挑戦をするが、結果的に迷惑をかけてばかり。カッとなるとすぐに手が出て、妹の就職先の社長の息子と暴力沙汰を起こす。投資詐欺に騙されて借金を増やし、ボクシングジムで輝かしいデビューを果たすも、すぐに逃げ出した。妹の財布からお金を抜き取り、さらに借金を増やし続けているニーニー。 2010年にデビューした竜星は、2013年から放送された『獣電戦隊キョウリュウジャー』(テレビ朝日系)の主役“キョウリュウレッド”で注目を集めた。『アンナチュラル』(TBS系)では謎の葬儀屋を演じ、2018年放送の『昭和元禄落語心中』(NHK総合)では、刑務所から出てきてから落語家を目指す風変わりな若者・与太郎を熱演。 2020年夏には『弱虫ペダル』『ぐらんぶる』と同時期に、2本の映画に出演。『ぐらんぶる』は、ほぼ裸のシーンばかりのドタバタコメディで、文字通り体を張った演技を見せた。NHK連続テレビ小説は、2017年放送の『ひよっこ』に出演経験がある。優しく爽やかな警察官・綿引正義(まさよし)を好演していた。 また、竜星は183cmの長身を生かし、モデルとしても活躍。フランスに渡ってオーディションを受け、『Yohji Yamamoto HOMME 2016-2017AW Paris Collection』にて、パリコレデビューを果たしている。運動神経も抜群で、中学生の時はサッカー部だったのに陸上部の助っ人として、走り高跳びで市大会に出場し、優勝、都大会にも出場したというエピソード(※1)を持つ。キックボクシングの経験があり、身体能力を生かしアクションもこなす。コメディセンスもある表現の幅が広い俳優だ。 ■“元”戦隊ヒーローたちの活躍にも注目の『ちむどんどん』 『獣電戦隊キョウリュウジャー』は子どもたちに人気の恐竜をモチーフにした、「王道の戦隊ものを」というテーマで製作された作品。竜星演じる桐生ダイゴは、幼い頃から父親と世界中を旅してきた熱い男。ちょっと空気の読めない真っ直ぐなキャラクターで、自ら「俺のあだ名はキング。遠慮せずに呼んでくれ!」と初対面の仲間達に伝え、「いや、呼ばねーよ!」と引かれてしまう。それでも持ち前のポジティブさで、少年漫画の主人公さながらに仲間を引っ張り、回を追うごとに魅力を増していた。 サンバのリズムで踊りながらの陽気な変身シーン、最終的には仲間が10人に増えたのも視聴者を驚かせた。キョウリュウバイオレットを演じた、飯豊まりえが『ちむどんどん』第8週から登場することもわかっており、「レッドとバイオレットが共演!」と、密かな話題を呼んでいる。キョウリュウジャーは戦隊シリーズの人気の指標である玩具の売り上げが、20年ぶりの高水準を記録した、多くのファンがいるシリーズでもある。 もう一人、戦隊ヒーロー出身の俳優がいる。良子(川口春奈)とお互いに想いを寄せながらも、なかなか進展せず視聴者を“わじわじ”(イライラ)させていた石川博夫を演じた山田裕貴は、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(テレビ朝日系)でゴーカイブルーを演じていた。 第34話では、賢秀と、長女・良子の想い人・博夫が睨み合う場面があり、「キョウリュウレッドとゴーカイブルーの対決だ……!」と、本筋ではない部分でひそかな盛り上がりを見せていた。 博夫の真っ直ぐな視線と表情に、「結婚したいんです!」の、熱を帯びた言い回し。それを聞く良子役の川口春奈の移り変わる表情に、ぐっと引き込まれた。賢秀は、良子の婚約者の父からお金を騙し取ろうとしていたことがバレないように必死にしゃべっていて、「お前が言うな」状態ではあったが、「俺の、大事な大事な大事な大事な、妹なわけよ!」の言葉には、妹を思う兄の心があったと信じたい。 良いところのないように見える賢秀ニーニーにも、光る瞬間はあった。第19話、主人公・暢子(黒島結菜)の参加する料理大会で、機転を利かせて妹を助けたのだ。なかなか客が集まらない場面で、スッと立ち上がり暢子が販売している「やんばるそば」を受け取り、魅力をプレゼンして多くの客を集めた。生き生きとそばの魅力を伝える姿に、ここからニーニーが強みを生かして活躍してくれるか、と期待したのだけれど……! 竜星は、笑福亭鶴瓶が旬な俳優と台本なしで即興舞台に臨む『スジナシシアター』5月29日の回に出演を予定している。鶴瓶は「結構ひどい役をやってるんやな(笑)。どんなニーニーや(笑)。でも、朝ドラの先入観は持たずにいくからね。また違った竜星涼が見られると思うとワクワクします」と、愛あるメッセージを寄せており、筆者も同感だ。ハイスペックなイケメンさを全く感じさせない賢秀ニーニーは、コメディも多く演じてきた竜星ならではの役だと感じる。 『ちむどんどん』公式ガイドでは「賢秀を演じていると、ト書きにないアイデアがポンポン湧いてくるんです。(略)“いつかは俺もビッグになる”と、もがく比嘉家のニーニーを、温かい目で見守ってもらえたらうれしいです」(※2)と語っている竜星。お調子者で単細胞、動きも表情も発言もおおげさな男、賢秀を楽しんで演じていることが伝わってくる。2016年に映画『シマウマ』で残虐な役を演じたときに「嫌われたら役者冥利に尽きる」(※3)とも語っていた。 賢秀のあまりのダメっぷりに、竜星のイメージを心配する声もある。しかし、これだけの賛否が生まれることは、役者冥利に尽きると感じている竜星のファンの様子が、SNSで多く見られる。竜星演じるニーニーの成長はあるのか。次に竜星がどんな役を演じるのか、今後の俳優キャリアにも期待せずにはいられない。 ■参照 ※1. https://www.tv-asahi.co.jp/kyouryu/interview/02/ ※2. 『NHKテレビドラマ・ガイド 連続テレビ小説 ちむどんどん Part1』(NHK出版) ※3. https://youtu.be/3B3YULyVDtI
片岡由衣