THE ALFEEと甲斐バンドのデビューアルバムが象徴するもの、共通点と相違点を語る
屈辱の始まりだった甲斐バンド
バス通り / 甲斐バンド かわいらしい歌ですね。学生だった僕に上手く愛は語れなかった。初恋アニメみたいな曲ですね。甲斐よしひろさん、大森信和さん、長岡和弘さん、松藤英男さん。福岡のライブハウス「照和」で歌っていたメンバーですね。デビューしたときのキャッチフレーズが九州最後のスーパースター、鳴り物入りだったんですね。事務所がシンコー・ミュージックだった。12月に神田共立講堂、先輩バンドのチューリップがオープニングアクトに出たんですけど、甲斐バンドが歌っていたら、チューリップのお客さんが席を立った、屈辱の始まりでした。 前半は甲斐バンドの『らいむらいと』、その中から「魔女の季節」。 魔女の季節 / 甲斐バンド おもしろい曲でしょう。フォークとサイケとリズム&ブルースが一緒になっているみたいな。で、うねっている。これが甲斐バンドなんだなって、あらためて思ったりもしました。甲斐バンドは福岡の「照和」で歌っていたバンドのピックアップ・グループだったんです。デビューのきっかけが文化放送の「ハッピー・フォークコンテスト」でグランプリを獲得したことなんですが、このときは甲斐よしひろさんのソロだったんです。グランプリをとってプロになるときに、甲斐バンドになったんですね。 フォークコンテストで歌ったのが「ポップコーンをほおばって」なんですよ。この「ポップコーンをほおばって」は『らいむらいと』には入ってないんですね。1975年に2枚目のシングル『裏切りの街角』がヒットして、「ポップコーンをほおばって」と「裏切りの街角」の両方が2枚目のアルバム『英雄と悪漢』に入った。そういう意味ではこの『らいむらいと』はアマチュア時代の曲の集大成なので、甲斐バンドのデビュー・アルバムということで言うと、『英雄と悪漢』になるんでしょうけど、さっきの「バス通り」がありましたからね。 甲斐バンドはフォークっぽいというイメージがついてしまった。そのへんが本人の思っているイメージと世の中の扱い方がちょっとずれていく、そんな一例でもあるんでしょうね。後に『らいむらいと』は再発されたときには「アーリー甲斐バンド」と銘打たれてました。当時は甲斐バンドのディスコグラフィーの中でも、時々このアルバムが入っていなかったりすることがあったというアルバムなのですが、今聴くと、やっぱり甲斐バンドの源流があるんだなと思います。 『らいむらいと』は甲斐バンドというより、甲斐よしひろさんの色が強い。そんなふうに思いながら、この曲もお聴きいただけるとと思います。これは彼ら流のブルースでしょうね。 思春期 / 甲斐バンド 6分以上ある。この気だるさが好きです。洋楽の三連のブルースという感じですけど、ある種の気だるさが福岡なのかもしれません。あの時代でしょうね。なんで甲斐バンドが好きだったのかこの曲であらためて思ったりしました。甲斐バンドという名前は事務所がつけたんですね。THE ALFEEもそうなんですけど、甲斐さんは「ペパーランド」という名前にしたかった。「イエローサブマリン」というビートルズの映画がありましたよね。あの中の愛の国がペパーランド。甲斐バンド、それから甲斐よしひろさんの中の洋楽と邦楽というのが、いろいろな形で現れているのが甲斐バンドだった。2枚目のアルバム『英雄と悪漢』。あれはビーチ・ボーイズの曲のタイトルですし、「魔女の季節」というのはドノヴァンの1966年のヒット曲で、ゴールデン・カップスもカバーしている。フォークとサイケとブルースが一緒になっているみたいな、そういう流れの中に甲斐バンドがあった、甲斐さんもいた。 甲斐さんが「照和」で組んでいたバンド名が「ノーマン・ホイットフィールド」という、モータウンの設立者の一人の名前だった。そういう名前でありながら、クロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤングのようなカントリー・ロックをやってたんですね。モータウンとカントリーに歌謡曲が入ってきている。甲斐さんは小学校のときに紅白歌合戦で歌われる曲の歌詞を全部歌えたという人ですから、そういう要素が集まったのが甲斐バンドだった。まさに日本のロックなんだなと思いながら、あのアルバムを聴いていただければうれしいですが、『らいむらいと』の中にこんなカバーがありました。「吟遊詩人の唄」。 吟遊詩人の唄 / 甲斐バンド これは1974年1月に発売になったレオ・セイヤーのシングル『ワンマンバンド』の日本語バージョンなんですね。訳詞している。つまり、日本で紹介されてすぐに歌ったということでしょうね。甲斐さんならでは、甲斐バンドならではの少年っぽさが、そうさおいらは~♪って、おいらって響きがなんとも言えませんね。この曲のカセットを財津和夫さんがシンコー・ミュージックのスタッフに聴かせたというところから、別のストーリーが始まっていくという曲でもありますね。 1978年に出た甲斐バンドの最初のライブアルバム『サーカス&サーカス』、あの中に入っていたバージョンが後に先行シングル、ライブ盤で発売になりました。女の子のお客さんの大合唱が聴けますね。当時の甲斐バンドのライブの雰囲気を味わえる1曲でもあります。 後半はTHE ALFEEのアルバム『青春の記憶』。まずはアルバム・タイトル曲「青春の記憶」。