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世界の経営理論に「ビジネスモデル」がない理由

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東洋経済オンライン

2019年末に刊行された早稲田大学の2人の経営学者の著作が話題となっている。井上達彦氏の『ゼロからつくるビジネスモデル』と、入山章栄氏の『世界標準の経営理論』だ。前者が500ページ強、後者が800ページ強ものボリュームだ。 【写真】井上達彦氏と入山章栄氏 井上氏の所属は商学部で大学生に、入山氏はビジネススクールで実務家に経営学を教えている。それぞれのフィールドも異なる。かたや日本発の経営学、入山氏はアメリカを中心とする世界の経営学だ。前回に続いて、そんな立場が対照的な名物教授である2人が、「ビジネスモデル」の研究と実践について、自由に語りあった。

■なぜビジネスモデルは科学との相性が悪いのか?   入山:私は井上さんの新著『ゼロからつくるビジネスモデル』にすごく関心があるんです。なぜなら、海外の経営学では、トップジャーナル(学術誌)に「ビジネスモデル」をテーマにした研究が載ることはほとんどありません。  なぜかというと、私の理解では、ビジネスモデルとエコシステムは、既存の経営学で扱いづらいから。両方ともフワッとしていて、いろんな要素があり、全体性が重要になってくる。

 現代の科学は要素還元主義なので、分解して、分解して細かいメカニズムを解き明かす傾向にあります。経営学もそう。細かいメカニズムを解明し、それが積み上がっていくと全体が説明できるだろうと考える。しかし、現実はそう簡単ではない。だから、もともと「全体」を説明しようとするビジネスモデルとは相性がよくないのです。  かといって、海外の経営学者はビジネスモデルに興味がないというと、まったくそうではありません。学会でビジネスモデルのセッションを開くと、大勢の人が集まりますから。その意味でいうと、実務には絶対に意味がありそうだけど、科学的には捉えづらいビジネスモデルというテーマで本を書かれたところは、井上さんっぽいですね。

 井上:私は基本的な姿勢として、経営学者は役に立ってなんぼだと思っています。要素に還元できるもの、科学で語りやすいものだけを語って、経営のためになるかというと、決してそんなことはない。むしろ、経営は総合だと思います。  私の師匠の加護野忠男先生(神戸大学名誉教授)も伊丹敬之先生(国際大学学長、一橋大学名誉教授)も『ゼミナール経営学入門』の中で、「経営の神髄は矛盾のマネジメントだ」と書いています。  矛盾というのは、複数の要素があり、ここの組織を正常化すれば、別のところで別の問題が起きるからです。そして、これに絶えず直面するのが経営者だ、と。だから経営者は複数の視点から同じ現象に切り込んで、総合的に判断しなければならないというのです。

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