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宮崎の口蹄疫から10年、忘れられぬ「あの惨状」 現場支援に当たった研究者の述懐

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47NEWS

 牛や豚に感染して瞬く間に広がり、畜産に大ダメージを与える家畜伝染病の口蹄疫(こうていえき)。約30万頭の殺処分に至った宮崎県での大発生から10年がたった。農業・食品産業技術総合研究機構動物衛生研究部門海外病研究拠点(東京都小平市)の山川睦(やまかわ・まこと)海外病研究統括監は、家畜伝染病のエキスパートとして当時、現場の支援に当たった。今、人間の間では新型コロナウイルスが猛威を振るうが「動物の伝染病も、海外から持ち込まれる危険は常に隣り合わせ。あの惨状を繰り返さないため、日頃の防疫体制や備えを徹底する必要がある」と話す。(共同通信=永井なずな)  ▽陽性  2010年4月19日深夜、発熱やよだれの症状がある牛3頭の検体が、宮崎県都農町から小平市の施設に届けられた。陰圧構造の特殊な施設で検体は直ちに検査され、翌20日未明、口蹄疫の陽性が判明した。  口蹄疫は、口蹄疫ウイルスが牛や豚、ヤギなど「偶蹄類(ぐうているい)」と呼ばれる動物に感染して起きる病気で、口の中やひづめの付け根などに水疱(すいほう)ができるほか、発熱や食欲不振といった症状が現れる。ウイルスは空気感染し伝播力が非常に強いため、国の指針では、発生した農場の家畜は全て殺処分して埋却され近隣農場でも家畜の移動が制限される。感染した家畜に触れたり肉を食べたりしても、人に影響はない。

 山川さんは当時、鹿児島市の動物衛生研究所九州支所に勤務していた。「陽性の知らせに血の気が引いた。信じたくない気持ちだったが、一刻も早く対処しないと大変なことになると思った」  発生数日後に宮崎県庁へ入り、技術支援を担った。農林水産省や農研機構の職員が多数応援に動員されてきたが、「感染拡大のスピードが速く、人員や資機材の確保が追いつかない。現実が想定をはるかに超えていて、時間がない中で難しい判断を何度も迫られた」。殺処分した家畜は本来なら敷地内に埋却する必要があるが、場所の確保が追いつかず、消毒を徹底し感染を広げにくいルートを探した上でやむなく外部へ移送したしたこともあった。  殺処分の現場は忘れられない。「家畜の鳴き声や作業を指示する人の声、重機の音が交錯して騒然としていた。水分を補給しながら防護服で動き回ったが、飲んだ分だけ汗になって出ていってしまうので、長時間トイレに行かなかった。1日が終わると、心も体もどっと疲れた」

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