被災地トイレの1か月…どんな試行錯誤が 【#みんなのギモン】
能登半島地震の被災地で、トイレがかつてなく劣悪な状況になっています。石川県は1月27日、これまでに点検を行った県内の下水道の25%が被災し、奥能登では71%が被災していたと明らかにしました。断水も続き、ほとんどのトイレが流せない状況です。この中、仮設トイレに加えて次々と運び込まれているのがトイレトレーラーです。断水時、トイレはどんな問題に直面するのか、どう乗り越えようとしているのか取材しました。 (能登半島地震取材班、経済部)
■発災直後、避難所トイレ「使用中止」も
地震の直後、市役所や学校などの避難所に身を寄せた人は3万人以上。多数の人々が各階のトイレに集中しました。しかし断水で水は流れず、排泄物がたまり悪臭が立ちこめる状況に。使用中止で封鎖されるトイレも相次ぎました。段ボールなどで簡易トイレも作られましたが状況は改善されません。 そこへ運び込まれたのが仮設トイレです。経産省によると、1月4日に91基、5日に82基の計173基が送られました。過去の災害での仮設トイレの設置状況や国連などの基準を踏まえ、各自治体は発災当初は避難者50人に1基、避難が長期化する場合には20人に1基のトイレの確保を目安にしてきましたが、現実は3万人の避難者に対して極端に少なかったと経産省も認めています。
■仮設トイレ次々 試行錯誤も
千葉県市川市に本社がある日野興業。仮設トイレなどを製造・レンタルする企業です。国やゼネコンなどからの要請を受けて能登半島地震の被災地に約200基の仮設トイレを設置しました。 今回、工夫しているのは水を凍らないようにすることです。出荷する際、水に薬剤を混ぜて凍りにくくしたり、現地で不凍液などを投入してもらっているといいます。 また、高齢者や女性、子どもなどは洋式が利用しやすいと考え、和式のものにアタッチメントを使って洋式化していますが、高齢の男性や「洋式は肌が触れるために不衛生に思える」という人たちからは和式の方がいいという声も一部であがっていて、便座除菌クリーナーを備え付けるようにしました。 さらに日野興業は国と相談し、現地に運ぶ仮設トイレすべてに照明をつけています。熊本地震の発生直後、真っ暗で使えず携帯電話のライトで照らしながら使っていたこともあり、単三電池で使えるライトを仮設トイレ1つ1つに備えたといいます。 設置場所にも慎重さが必要です。においを考え避難所から少し離れた場所に設置すると防犯上の不安も生じ、試行錯誤がありました。 1月26日までに、経産省が把握しているだけで石川県内に1068基の仮設トイレが設置されました。1月29日時点の1次避難者数は8945人で、仮設トイレ1基あたり8.4人と、数字上は足りていることになります。 それでも地域によってはトイレの数が足りないと考えられる上、断水が続いていることでトイレの復旧もままなりません。日野興業の担当者は「これまでの災害では1か月たつと撤去を行うケースが多かったのに対し、能登の被災地で今もこれだけの仮設トイレが使われ続けているのは異例」と話します。