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フェイクの発信がフェイクニュースの目的ではない|データ時代の情報心理戦

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本がすき。

■「混乱させる」ことが目的のフェイクニュース戦術

SNSを使った中国政府の画策を、私は身近で感じたことがある。19年、私は自分のツイッターのアカウント(@martfack)を使って、香港で続く反政府デモの動画や情報、ニュースを発信し始めた。すると急に、ネット右翼のような人たちからの批判がドッと押し寄せたのだ。 それらのアカウントの書きこみをさかのぼり、よく見てみると、日本語で書かれていてネット右翼っぽくはある。だがなぜか香港の反政府デモをまったく応援せず、中国政府の立場を守るものがほとんどなのだ。 「なぜネット右翼が中国政府の立場を支持するのだろう。これは本当に日本人が作ったアカウントなのか」と怪しく思った。おそらく中国政府の指示によって、ネット右翼の真似をした日本語のアカウントが作られているのだろう。 SNSでフェイクニュースや扇情的なメッセージを流し、見ている人に「えっ、何これ!?」と混乱を起こすことが彼らの目的なのだ。 厳しい指摘のツイートが、突然一斉に自分のアカウントに押し寄せたら、誰だって「あれ? ひょっとして私の考えはおかしいのか?」と心が揺れてしまう。冷静になって考えることなく、多量の扇情的メッセージに影響されて意見がブレてしまうかもしれない。 少なくとも立て続けに非難のメッセージをぶつけられれば、不愉快な気持ちになる。「香港については触れないでおこう」。1人でも多くの人にそう思わせることができれば、中国政府は目的達成だ。 「あいつらは暴力的な非国民だ」「愛国主義者ではない」「デモ参加者は外国のスパイだ」――当局はデモに参加する人の動機、人格そのものを否定して、信頼を損ねようとする。 また、「デモの背後でアメリカ政府が操っている」といったように、わざと曖昧な表現を用いる。たとえば「CIAが民主派に××万ドルを支給してデモをけしかけた」などと主体や数字を明確にすると、すぐに調べられてウソだとバレてしまうからだ。 相手に「ウソとは言い切れない」と思わせる余地を残しておくことがポイントだ。 香港の人たちは、しばしば星条旗(アメリカの国旗)を自由と民主主義のシンボルとして使う。もちろん、みんながみんな星条旗を手にしているわけではない。しかし、当局はその様子を撮った写真をやたらと取り上げ、「見ろ、デモの参加者は親米派だらけじゃないか。この運動は最初からアメリカ寄りの人間が引っ張っているのだ」と訴えるのがお決まりのパターンだ。 本当の情報や写真を少しだけスパイスのように混ぜながら、自らの意図するほうへ世論を引っ張る。信頼性を失わないように、100%ウソの書きこみはしない。これがフェイクニュース戦術の特徴だ。

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