「ジャングルポケット」斉藤慎二が抜けて残った太田博久、おたけの実力は?
当時のジャングルポケットは、斉藤をトリオの中のエースと位置づけていて、彼の個性を前面に出していた。その後、バラエティ番組に出るようになると、ほかの2人の個性にもスポットが当たるようになった。 太田は豊富な格闘技経験を生かして、『炎の体育会TV』(TBS系)などの柔道やレスリングの企画で活躍した。2015年にモデルの近藤千尋と結婚して、子供ができてからは、夫婦で共演する機会も多くなり、家族関係のイベントなどにも出るようになった。
おたけは、トリオの中では何もできない不器用なポンコツキャラという扱いを受けていた。ただ、笑いの基本は「緊張と緩和」である。斉藤も太田もテンションが高い「緊張」側の資質を持っているため、おたけのマイペースな感じは「緩和」として機能する。彼は彼でトリオのバランスをとるために重要な役割を果たしていたのだ。2023年には、実家のもんじゃ焼き屋の経営を受け継いだことが報じられて、そのことでも話題になった。
斉藤はトリオの切り込み隊長のような役割で、先陣を切ってバラエティ戦線に乗り込んでいった。器用にトークができるタイプではないが、話に詰まっても大声を張り上げて「はーい!」などのギャグで無理矢理オチに持っていく。それもまた一つの芸だった。 彼らはテレビに出るようになってからも、地道にネタを作り続けてきた。そして、コント日本一を決める大会『キングオブコント』で優勝することを目標にしてきた。その努力の甲斐あって、2015年には初めて『キングオブコント』の決勝に進んだ。
ここで見事なネタを披露して底力を見せつけた。キャリアを重ねたことで彼らのコントも進化を遂げていた。斉藤の個性を生かしながらも、そこに頼ることなく、ネタ作りのうまさで笑いを取っていた。すでにテレビの人気者というイメージもあった彼らが、コントの達人として改めて評価された瞬間だった。 ■残った2人も実力は本物 その後、彼らは2017年まで3年連続で『キングオブコント』の決勝に進んだ。彼らのネタはわかりやすく、幅広い層に受け入れられやすいものを持っている。そういう部分も審査員に評価されたのだろう。
ジャングルポケットは、バラエティタレントとしてもコント芸人としても、揺るぎない地位を確立していた。トリオとしての歯車は噛み合っていて、何もかもが順調だったように見えた。 だからこそ、今回のトラブルは本当に残念でならない。おたけと太田はお笑いコンビ「ジャングルポケット」として、新たな道を歩み出すことになる。険しい道のりではあるが、ここまで来た彼らの実力は本物だ。見る側の立場としては、騒動のことはいったん忘れて、2人の今後の活動を見守っていきたい。
ラリー遠田 :作家・ライター、お笑い評論家