【熱望!】水平対向の叫びを再び!! [スバル]よもうWRCに復帰できるんじゃね?
■スバルをその気にさせるには?
かつて一部のモータースポーツメディアから「スバルがWRCへ復帰する可能性が浮上」、「FIA会長が復帰に向けた話合いがスタートしたことを公言」、「豊田氏が架け橋に」などと報道された事もあるが、実際はどうなのか? 筆者はこのように考えている。スバルはこれまでのWRC参戦によって「クルマ」も「人」も鍛えられてきたことは紛れもない事実だし、社内にも復帰を望んでいるエンジニアがたくさんいることもよく知っている。 富士スピードウェイで行なわれたS耐最終戦でニュル24時間仕様のスバルWRX S4 × モリゾウのサプライスを見るために訪れていたスバルの大崎篤社長は、自動車メディアからのラリーへの質問に対してこう答えている。 「出るとなると、具体的にどういう車両でどのようにやるかとか、レギュレーション上の難しいところもある。我々も離れてずいぶん経っているので、準備にも時間がかかるでしょう。長い目で見てください」と語っている。 ちなみにWRCは"世界"と名がつくもののスバルがビジネスの主戦場する北米にラウンドがない。さらにはRally1車両に適するBセグメントのコンパクトモデルが現在スバルのラインアップにないこと、などが挙げられる。そういう意味でいうと、現時点のWRCにはスバルが復帰するメリットが少ないのも事実だ。 自動車メーカーはWRCに参戦することが目的ではなく、WRCに参戦して何が得られるかが大事な部分である。当然、今後の量産車開発に活きることは間違いないだろうが、それだけではダメであり、マーケティングや耐費用効果も含めた総合的な判断が求められる。そういう見方をするとどうだろうか? つまり、スバルを"その気"にさせるためには、「WRCを変える」という決断も必要となってくるだろう。ただ、そのキッカケになりそうな変革はいくつかある。
■参戦自体ではなく参戦から何が得られるかが重要
ひとつは2025年シーズンからのハイブリッドユニット使用の禁止だ。この狙いは「参戦する自動車メーカーの開発費削減」、「下位クラスからステップアップする選手の順応性を高める」、「CN燃料に焦点を絞り車両技術を簡素化する」が目的。 さらに2026年からRally1の技術規則が改定される。高コストや複雑さを軽減するためにセーフティセル(保護用骨格)は共通のものを使用。さらにB/Cセグメントのコンパクトカーに加えて、性能均等化のために重心や空力など、厳しい技術基準に基づいて設計されたコンセプトカーなど、市販モデルをベースにした独自の車体を持ったマシンの開発も可能になるという。 他のモータースポーツをみると、たとえばWEC(世界耐久選手権)はハイパーカークラスに参戦するメーカーが増えたことで人気が高まった事例があるが、WRCもそうなってほしいと願っている。 スバルの技術トップである藤貫哲郎CTOは「スバルがスバルであるためには、水平対向エンジンの技術は絶やしてはならない」と語っているが、是非ともWRCで鍛えてほしい。 もうひとつは興行面の改革である。2025年のWRCカレンダーには南アメリカのパラグアイが加えられたが、1988年以来行なわれていない北米でのWRC開催も検討中のようだ。ちなみにラリーUSA(アメリカ国内ラリー選手権の公認イベント)の主催者チームが「2026年のWRC昇格を目指している」と言う報道も耳にしている。 かつてF1は北米ではインディ・NASCARなどにまったく歯が立たなかったが、動画配信サービス「Netflix」がF1を題材にして制作したドキュメンタリー番組の効果により、若年層のファンが急増した。 F1は1カ国1レースの開催が原則だが、北米は特例で現在3つのレースが行われている。ホンダは2026年にF1に復帰するが、その理由の1つは「北米でのビジネスに活きる」と言うことも大きかったのではないかと分析している。 繰り返すが、自動車メーカーはWRCに参戦することが目的ではなく、WRCに参戦することで何が得られるのかが大事。そういう部分で見ていくと、レギュレーション、興行、そして参戦メリットの三位一体がスバルを動かす原動力になってくれるはずだと信じている。