【トランプは中国との貿易戦争に勝てるのか?】厳しい中国の経済状況も、危険はらむトランプの4つの特性
2024年11月14日付ニューヨーク・タイムズ紙の論説で、民主主義防衛財団のシニア・フェローのクレイグ・シングルトンが、トランプは中国との貿易、先端技術等の経済競争で勝利できるかもしれないとの楽観論を述べている。 中国は、経済の停滞を始め様々な問題に直面し、トランプの自己主張的な戦術に対して脆弱である。トランプが1期目の威勢の良いスタイルに、より焦点を絞った戦略と厳格な規律を組み合わせることができれば、中国を守勢に立たせ、恒久的に米国有利に変える絶好の機会となる。彼のゼロサム・アプローチと型破りな戦術、そして新たな対中強硬派内閣は、習近平を追い込むことになろう。 中国は、習近平の失政と弾圧、深刻な債務、記録的な失業率、人口減少と急速な高齢化に直面し、実際には衰退しつつある大国だ。 一方、米国経済は勢いを増している。トランプは、中国からの輸入品に60%の関税をかけることを提案している。これは中国の国内総生産を最大2%引き下げる。 トランプの威勢と瀬戸際外交は、台湾に関しても貴重なものとなる可能性がある。習近平の目標は、必要であれば武力によって、台湾を中国の統治下に置くことだが、トランプは、中国が軍事行動に出れば中国製品に200%の関税をかけると脅しており、先月、習近平は台湾問題で挑発することはないだろうと指摘した。 トランプの復帰に対する中国の不安はすでに表面化している。トランプが選挙で決定的な勝利を収めた後、中国の指導者たちはすぐに融和的なトーンを強め、平和的共存と新たな協力の時代を呼びかけた。 しかし、半導体、人工知能、自動運転、量子コンピューターといった重要技術をめぐる中国との競争は加速されるだろう。中国が主導権を握れば、米国の安全保障が損なわれる危険がある。
トランプはこのリスクを認識し、中国のハイテク企業に対する関税、輸出規制、制裁を強化し、ハイテク部門への米国投資を厳しく審査するだろう。この戦略は超党派の支持を得て、中国の高度な軍事力の開発と展開を妨げることができるかもしれない。 米国にとり関税措置は、消費者に影響を及ぼす貿易戦争を引き起こすが、トランプは、戦略的利益のために短期的な政治的コストを受け入れる用意があり、世論調査によれば、ほとんどの米国人はトランプの関税による威嚇を支持している。 最後の手段として、習近平は台湾や南シナ海での緊張を増大する可能性があるが、それは米国の同盟関係を活性化させ、地域の米軍のプレゼンス強化を招く。 永続的な成功を収めるには、米国国内の刷新、軍事費の強化、民間活力、そして特にアジア・欧州の同盟関係等を組み合わせ、より広範な「力による平和」のアプローチが必要となる。次期政権は、これが中国と対峙するための重要な要素であることを理解し、「アメリカ・ファースト」のアプローチを刷新して同盟国間の公平な負担に焦点を当てることが必要だ。 同盟国への過度な関税賦課や相互防衛協定への米国のコミットメントが疑問視されることは、抑止力を弱め、中国が利用する外交的亀裂を生むだけだ。トランプが、同盟国との関係を築き、規律を守ることができれば、勝利は可能だろう。 * * *