日本で時代劇がオワコン化した「3つの理由」…故・松方弘樹が時代考証までやっていた(城下尊之/芸能ジャーナリスト)
【城下尊之 芸能界ぶっちゃけトーク】 前回、このコラムで真田広之(63)主演・プロデュースのドラマ「SHOGUN 将軍」がエミー賞で史上最多18冠を獲得したことを書いた。 【写真】エミー賞のトロフィーを掲げる真田広之 僕が気になったのは、その際に真田があえて日本語で「時代劇が海を、国境を越えた」とスピーチした部分。いま、日本でこれといった時代劇ができていない現状(オワコン化)を憂えているように見えた。 「SHOGUN」の大ヒットを受け、テレビ朝日の社長は定例会見で「(時代劇は)非常に大事なコンテンツのひとつ。定期的に新作を単発ではありますけれども制作している」と発言していた。確かにテレ朝はヒット作「必殺仕事人」などの時代劇は続けているし、「暴れん坊将軍」も早朝に再放送しているように、時代劇に対するニーズがあることはわかっている。 しかし、映画でもドラマでもそう簡単に制作に乗り出すことができないのが現実だ。時代劇は「金がかかる」というのがまず一番の理由。出演者全員にカツラと衣装を用意し、結髪さんと着付けの人員を大幅に増やす必要がある。 さらに時代劇の制作は現代劇の倍以上の時間がかかるのも原因のひとつ。時間はお金に直結する。撮影する場所も大問題だ。大きな城の天守閣をバックに撮影しようとしても、足元を見ればほとんどが舗装された道路で、腰のあたりから上で撮影するしかない。そうすると、狭苦しい映像になってしまう。 外ロケで山をバックに撮影していても、その真っ最中にトラックが走ってきて中断する。撮り直しを始めると、今度は飛行機が飛んでくる。機体が写らないように撮っても音が入ってしまう……。こうして撮影が遅々として進まないこともしばしばだ。 もちろん、別の予算を立て最新技術で消すことも可能だが、一方で夏祭りのシーンを撮りたいときなどは、参道にズラリと並ぶ屋台などの店をセットで組み、遠くにいる役者の衣装まで用意しなくてはならない。 そして時代考証も必要なのだが、実は“プロ”と呼ばれる人もほとんどいなくなった。故・松方弘樹さんがセットを見て、「この時代にこんなものはなかった」と指摘したことがあった。結局、役者の松方さんが全ての時代考証をやっていた。 金と時間と時代劇を知る人のすべてが必要となるとそのハードルは高い。日本のテレビ局は低予算だが、今回の「SHOGUN」の成功は何かのきっかけになるのでは。マーケットを世界に広げて、どうにかならないだろうか。 (城下尊之/芸能ジャーナリスト)