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ケン・ローチ監督「偽左派政治家の影響で労働者が使い捨てに」 カンヌで批判

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The Guardian

【記者:Gwilym Mumford】  映画監督のケン・ローチ氏が今月16日、カンヌ国際映画祭で最新作『Sorry We Missed You(原題)』がプレミア上映された際に、英国では労働党のエド・ミリバンド元党首やトニー・ブレア元首相のような「偽左派の政治家たち」が「思いやりのある資本主義」の名の下で労働の不安定性をもたらしたと批判。中道左派が自由市場を支持しているせいで、ギグエコノミー(インターネットを通じて単発の仕事を受注する労働形態)と「蛇口をひねったり閉めたりする感覚で使い捨てされる弱い」労働者階級が増える結果につながったと主張した。 「『偽左派』とでも言うべき政治家がいて、ミリバンド氏もそうだが、その前からもいた」とローチ監督。「ブレア氏のことは、もはや話題にも上らない。彼らは『思いやりのある資本主義』という、ありもしないものの話をした。皆、その架空の生き物の話をしているが、誰も見たことがない。自由市場を良いものだと思っていると、大企業が力を持つようになり、より低賃金を求める競争をもたらし、不安定な労働へとつながる」  労働の不安定化は、社会主義リアリストとして知られるローチ監督の最新作の主題だ。前作『わたしは、ダニエル・ブレイク』同様、英ニューカッスルを舞台に、労働者を食い物にする宅配会社でゼロ時間契約(就労が保障されず、雇用主から要請があったときにだけ労働力を提供する待機労働契約)のドライバーの仕事を引き受けた主人公を描いた。 「私が若かった頃は、技術さえあれば生涯にわたって仕事が得られ、その給料で家族も養えると言われていた」とローチ監督は言う。「そうした安定した状態から不安定な状態へと容赦なく変化し、雇用も解雇もその日に言い渡されるような状況になった。雇用主は労働者の仕事量には責任を持たず、労働者がすべてのリスクを負う。資本主義が『失敗している』からなのではなく、資本主義が機能しているからこそなのだ」  このような不均衡を正す唯一の方法は、社会を「根本的に再構築」することだとローチ監督は言う。これに関して希望が持てる点は、現在の労働党の指導体制だと主張。「この数年の英国で唯一の明るい光は、労働党指導部に左派のジェレミー・コービン氏とジョン・マクドネル氏が就いたことだ」と述べる一方で、「彼らは、資本家の力を切り崩すと約束した。彼らに対する攻撃や中傷は度を越えているが、これからその傾向はさらに強くなる」として、こう続けた。 「彼らのような政治家たちが本気で資本家の力を低下させ、労働の安定性を取り戻し、力のバランスを変えて市民に還元しようとすれば、かつてないほどの攻撃や、匿名によるさまざまな中傷を受けるだろう」 『Sorry We Missed You』はカンヌ映画祭でプレミア上映されて以来、各所から称賛を受け、英ガーディアンと英インディペンデントの両紙は最高評価の五つ星を付けている。ガーディアンで映画評論を担当しているピーター・ブラッドショー氏は、「みぞおちを殴られたような衝撃を受けるとともに、うそのない演技にやられてしまった」と絶賛している。  ローチ監督はカンヌ映画祭では2006年に『麦の穂をゆらす風』、2016年には『わたしは、ダニエル・ブレイク』で最高賞のパルムドールを受賞しており、『Sorry We Missed You』で過去最多の3度目の最高賞を期待されたが、結局、受賞は逃した(日本公開は12月13日予定)。【翻訳編集:AFPBB News】 「ガーディアン」とは: 1821年創刊。デーリー・テレグラフ、タイムズなどと並ぶ英国を代表する高級朝刊紙。2014年ピュリツァー賞の公益部門金賞を受賞。

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