西浦教授が「Go To トラベル研究」への批判に答える
はじめに
1月21日にJournal of Clinical Medicineに掲載され、報道でも取り上げられた私たちの研究〔Anzai & Nishiura(2021)〕について、明治大学の飯田泰之さんと経済産業研究所の中田大悟さんの2人からSNSを通じて実名でコメントをいただきました(元論文は、こちらhttps://doi.org/10.3390/jcm10030398)。SNSでは科学的議論以外に飛び火しない建設的な議論をすることが難しいですし、今私は緊急事態宣言下のデータ分析で大変多忙にしています。論文の作法としても、SNSは場外戦のようになってしまいます。ただし、日本で期せずして、一定以上に報道が広がりましたのでSNSで話題になりました。このまま放置するよりも、私が詳細を広くお返事した方が、物事が正常に進むと思って以下を執筆することとしました。
最初に申し上げますが、今回の私たちが発表した(疫学研究領域ではエビデンスレベルが低いと言われる)記述疫学研究1編は、それだけでGo Toトラベルという政策の是非を強く問うものではありません。また、この私たちの記述疫学研究が、広い範囲で報道に取り上げられましたが、それが政策議論に直結しすぎるのも私たちの意図するところではありません。
現に今回の出版物はプレスリリースにかけておらず、私のクローズドなFacebookの中で出版論文をいつも通り友達報告で投稿していたら、友達の1人であるReuters記者が論文情報を基に英文記事を書いたことから報道が始まりました。NHK科学文化部の記者の方は、2020年1月から続く取材の中で、本研究について昨秋からご存知でした。民放TVなどで必ずしも骨子が捉えられなかったり、偏向しがちに感じてしまう報道があるのですが、残念ながら、上述の通り、他分析で多忙を極めているので十分な取材には対応できずにいます(申し訳ありません)。これは言い訳です。 今回は、詳しい説明を書いて論点と主張を整理したいと思います。