阪神の新外国人サンズが新型コロナ感染拡大でも検討されている開幕プランに「不安」「疑問」と米紙に激白
メジャーリーグが参考にしようとしている異例の無観客試合についてもサンズは「違った感じだ。奇妙だったよ。相手の話。自分たちが、ダグアウトで話すこともすべて聞こえるんだ。難しいよ。スタンドにファンがいれば、得ることができる少しばかりの活力や一層の努力、集中力といったものも実感できない」と違和感を覚えていたことを明らかにした。 当初、4月24日の開幕を目指して練習試合などが組まれていたが、新型コロナの感染拡大の社会情勢の変化を受けて、その日程は白紙に戻り「4月下旬から5月上旬」に新たな開幕日を決定することが決まった。NPBとJリーグが合同で設立した「新型コロナ対策連絡会議」の専門家チームは、「できるだけ開幕日を先延ばしにしてもらいたい。5月の終わりくらいになんとかなるのでは」と提言。5月26日の交流戦から開幕するプランが、現在、有力となっているが、サンズは、その再延期されている開幕プランにさえ疑問を呈した。 「もし(リーグが)時期を問わずに延期して(開幕し)、その時に誰かが感染してシーズンを迎えたら、すべての試合を年末へ延期するのだろうか。試合を放棄するのだろうか。ひとつのチームに感染者が出れば、彼らは隔離されなければならない。日本には、リーグに12チームあるが、このチームや、あのチームと接触があったからと、突然、3、4チームを隔離すれば(シーズンを行うことは)現実的ではない。ウイルスは、いつなくなるのだろうか。どの段階でウイルスがなくなったと考えるのか。すべてが分からない。とても多くの疑問がある」 先の「新型コロナ対策連絡会議」でも、開幕後に感染者が発生したケースについての対応策が議題になった。
東北医科薬科大の賀来満夫特任教授は、「開幕後にチーム感染者が出ることはあり得る。起きたときにどう対応すべきかを今から考えておくべきだ。たとえば、レギュラーが2人ほど感染した。ベンチ内なので他選手への濃厚接触の可能性がある。1軍の仮に半分に陽性者が出た場合、どれくらいの期間、チーム全体を休ませるのか。相手チームとの関連もあり、日程調整をどうするのか。2軍でカバーするのか、などいろんなケースが考えられる。たとえば、巨人対阪神の3連戦で、どちらかのチームがそうなって試合ができなくなったときの対応についても考えておく必要がある」と指摘した。 これに対してNPBの斉藤惇コミッショナーも「新しいルールを作らないといけない」と、開幕後に感染者が出た場合の対応マニュアルの策定を約束した。だが、選手サイドからすれば、いくらマニュアルが作られても、常に不測の事態に脅えながらプレーすることには「不安」と「疑問」が残るだけだろう。その状況でベストパフォーマンスを期待するのは難しい。 加えて新外国人として、日本という新しい異文化の中で、結果を求められ、ダメならクビを切られるサンズの立場からすれば、なおストレスが増す。昨年は韓国で、28本塁打、113打点の成績を残し打点タイトルを獲得したサンズだが、もう一人の新外国人のジャスティン・ボーア(31)、2年目のジェフリー・マルテ(28)と外国人の出場枠を巡って熾烈なチーム内競争を勝ち抜かねばならない。オープン戦では、打率.238、2本塁打、2打点で、外角の変化球への対応が課題とされていた。不安な心境を米メディアに明かしたのも無理はない。 米大使館は、先日、日本に滞在中の米国人に対し、「無期限に海外にとどまる意思がなければ、ただちに帰国の準備をすべき」とホームページを通じて勧告している。サンズが、どんな決断を下すかは不明だが、彼が米紙に明かした本音は、開幕どころか、今シーズンが、どうなるかの先行きも見えない状況下で、選手が、今、どんな心境でいるかを端的に表現した問題提起だったのかもしれない。