田中将大の楽天退団に思う「エースの引き際」大きすぎる実績と譲れないプライド…スポーツにも通じる森脇健児の謙虚さ 岩本勉・どの口が言うとんねん
【岩本勉 どの口が言うとんねん】 まいど! 先月末に楽天からの退団を発表した田中将大投手(36)は現状、袂を分かった楽天以外の11球団からオファーを待つ状況のようです。一時代を築いたレジェンドの去り際には思うところがあります。 【写真】スタンドから声援を送る里田まい あらかじめ言っておきたいのですが、私は田中のこれまでの実績に敬意を持っていますし、技術と確かなメンタルを持った大好きな投手の一人です。通算200勝まであと3勝。これほどの実績を持ちながら、球場で顔を合わせれば気持ちよく挨拶してくれる礼儀正しい好青年だけに、今回の去り際はいかにももったいないと感じてしまいます。 今季の推定年俸2億6000万円から減額制限40%を超えるダウン提示をされ、合意できずに退団を選んだ形ですが、1軍で1登板のみ、1勝もできなかった36歳に億のカネを出せという方が無理というものでしょう。 来季契約のオファーを待つ現状、各球団の反応は芳しくなさそうです。かく言う私も2005年に日本ハムから自由契約となり、他球団に最後の働き場所を探し続けましたが、翌06年1月に引退を決断しています。もっとも、自己最多13勝を挙げた1999年以降の成績は右肩下がり。構想外の通告も「そりゃ、そうやわな」と受け入れました。むしろ、よく6年間も待ち続けてもらえたと思えます。 田中は13年に24勝0敗という前人未到のレコードを樹立。大きすぎる実績を持つと、譲れないプライドが生まれます。野球選手にとってのプライドは闘志の源泉になりますが、往々にして自分の置かれた現状を素直に受け入れる邪魔にもなります。田中本人が口にする「まだまだできると思っている」という言葉だけでは、来季の復活を信じる材料があまりに足りません。 悩みに悩んで自問自答した末に退団の答えを出したそうですが、田中の周りには客観的に助言してあげられる人はいなかったのでしょうか。現状では他球団からオファーはあったとしても、楽天が出したものを下回る条件であることは容易に予想できるでしょう。 惜しむらくは、楽天から大幅な減額提示があった際に、出来高や200勝に向けたグッズ売り上げの取り分を交渉して、マイナス分の補填に充てるといったビジネスに徹する切り替えはできなかったかということです。あわせて「来季を自分のラストシーズンにします。プロモーションを打ってください」と頼めば、多くのファンをホーム、ビジター問わずに呼び込めたことでしょう。不退転のシーズンで復活を遂げれば、自ずと引退を引き留める声も高まったはずです。