【陸上】23歳・星岳が初マラソン日本最高、24歳の山下と浦野ら7人がMGCに名乗り/大阪・びわ湖統合マラソン
◇第10回大阪マラソン・第77回びわ湖毎日マラソン統合大会(2月27日/大阪) 群雄割拠の男子マラソン界に、またも新星が名乗りを上げた。 初代王者・星岳のキャリアをチェック! 新設された冬の浪速路を駆け抜ける第10回大阪マラソン・第77回びわ湖毎日マラソン統合大会は、38km過ぎに3人の先頭争いから抜け出した社会人年1目の星岳(コニカミノルタ)が、従来の記録を11秒更新する初マラソン日本最高の2時間7分31秒で優勝を飾った。 「先輩方の力を借り、前のほうで勝負できればと思っていた。ちょっとでき過ぎな感じで自分でも驚いているけど、素直にうれしい」と笑顔を見せた。 予報では強い風が心配されたが、影響が出るほどではない。5度の折り返しを含め、多数のカーブがあるタフなコースにもかかわらず、ペースメーカーが事前に設定された1km3分ペースをきっちりと刻んだ。1時間3分30秒で中間点を通過しても、先頭集団には40人を超える選手がいる。 レースが動いたのは、そのペースメーカーが離れる直前の30km手前。アップダウンを使って今回で114回目のフルマラソンとなる川内優輝(あいおいニッセイ同和損保)、村山謙太(旭化成)らが揺さぶり、集団が崩れ始める。 それでも、星は「35kmまではできるだけ集団の中で体力を温存することを意識していた」と冷静に対応。この判断が後半に生きることとなる。 32km過ぎに川内らが後続に吸収され、先頭グループは再び一団に。代わって今回が昨年のびわ湖に続く2度目のマラソンだった山下一貴(三菱重工)が「前に出るつもりはなかったけど、少しペースが落ちていたので、自分のリズムで行ったら自然に前に押し出されていた」と先頭に立ち、ペースアップした。 すると一気に集団が崩れ、優勝争いは山下と、ともに今回が初マラソンの星、浦野雄平(富士通)の3人に絞られる。社会人2年目の山下と浦野、社会人ルーキーの星。学生時代から、それぞれ駒大、國學院大、帝京大の主力として活躍してきた3人が、実業団の名門チームでさらに力をつけ、マラソンを舞台に相まみえる。 その勝負を分けたのが、最後まで力を温存できた星。先頭を引っ張り合うかたちになった山下と浦野に対し、星が初めて先頭に立ったのが38km付近だった。 「後半はどこまで身体が持つか未知数で、余裕はなかった。でも、35kmで時計を見た際、初マラソン日本最高が狙えるタイムだったので、ペースを落とさないようにしていたら前に出て、後ろが離れていた」 そのまま最後まで押し切った星。初マラソン日本最高での優勝というだけでなく、オレゴン世界選手権の派遣設定タイム(2時間7分53秒)の突破、2024年パリ五輪代表選考レースのマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)への出場権獲得と、いくつもの成果を手にした。 もともとパリ五輪よりも、30歳で迎える2028年ロサンゼルス五輪に照準を定めていたという。そのめたに「早めにマラソンを経験しておきたかった」と今回の挑戦に至った経緯を話す。 レース前までは考えてもみなかった「世界」の文字が、急に目の前に現れたことに驚きを隠せないでいる。しかし、「今回はマラソンの怖さを知らなかったぶん、自分の感覚で走れた。結果を残したことで次のレースが重要になると思う。今後はさらに経験を積み、MGCでも勝負できる力をつけていきたい」と今後への抱負を力強く話した。 2位の山下も、初マラソンだった昨年のびわ湖の記録(2時間8分10秒)を更新する2時間7分42秒をマーク。3位の浦野も初マラソン日本歴代4位となる2時間7分52秒の力走を見せた。 後半追い上げた4位の丸山文裕(旭化成)までが2時間7分台(55秒)。5位、6位にはともに37歳の岡本直己(中国電力)、今井正人(トヨタ自動車九州)のベテラン組が2時間8分04秒(37歳日本最高)、2時間8分12秒(セカンドベスト)で続き、MGC切符を獲得する力走が光った。フィニッシュ後は声を掛け合い、「これでまた引退が延びたね」と笑顔で話していた。 また、今回は9位ながら2時間8分49秒をマークした川内も、2レース平均で2時間10分00秒以内という設定をクリア。MGC出場権を獲得した。 女子は、今回が3年ぶりのマラソンだった34歳の堀江美里(シスメックス)が序盤から一人旅。2時間32分10秒で国内初優勝を果たした。 国内最古のマラソンだったびわ湖毎日が昨年をもって終了。大阪マラソンと統合して大規模マラソンとして新たに生まれ変わった今大会は、コロナ禍の影響で2万人が出場を予定していた市民の部は中止となったが、エリートの部が高速レースとなって大いに盛り上げた。
花木雫/月刊陸上競技