Yahoo!ニュース

IDでもっと便利に新規取得

ログイン

注目を集めるウォッチ・メーカー、KIKUCHI NAKAGAWAとは?

配信

GQ JAPAN

コスチュームデザイナーから、タトゥーの彫り師、独立時計師まで、ジャンルを横断して、9人のインディーズ・クリエイターたちの作業場を訪れ、彼らに話を訊いた。既成の価値観にとらわれない、自由なものづくりをささえるインディーズ精神にせまる。Kikuchi Nakagawaというブランドをご存知だろうか? 旧知の仲の時計ジャーナリスト、広田雅将が解説する。 【写真を見る】時計好きなら見逃せない1本とは?

2人の独立時計師の狂気の結晶 刀剣のごときに

最近、一部の時計好きから注目を集めているブランドがある。名前はKIKUCHI NAKAGAWAという。今までに発表したコレクションは3針自動巻きのMurakumoのみ。ケースはステンレスしかなく、ムーブメントも自社製でないにもかかわらず、古典そのものといった造形や、入念な仕上げは、目の肥えた時計好きたちを熱狂させるには十分だった。 創設者は菊池悠介と、中川友就。前者は東大を卒業した後、ソフトウェア会社に勤め、それでも時計づくりへの夢を諦めきれずに退社し、フランスの時計学校に通った理論派である。後者は刀匠を目指したが、腰を悪くして断念。時計学校に通い、やがてシチズンや東京時計精密に籍を置いた、いわば実践派である。 筆者は彼らを、時計メーカーを興す前から知っている。菊池とは彼が学生の頃からお酒を飲んでいるし、筆者が関わる媒体でも仕事をお願いしていたが、まさか時計メーカーを興すとは思ってもみなかった。 中川は、住んでいるのが隣駅なので、昔から時計の修理を頼んできた。なお修理費のなかには、中華料理屋や焼き肉屋、居酒屋でのおごりも含まれる。最近は偉くなったのでお願いしづらくなったし、食事にも行けなくなったが、そういう付き合いだ。あるコレクターに「あの中川さんに修理をしてもらっていたのか」と言われたが、僕からすると、地元の中華料理屋で会っていた時計師が、なぜか時計をつくるようになっただけのことである。もっとも、その出来映えが、ずば抜けていたのは予想外だった。 サイトを見ると、このふたりは極めてまっとうに見える。実際、経歴はちゃんとしているし、人当たりもソフトだが、仮に時計をつくっていなかったら、廃人になっていたのではないか。菊池は資料を読むとこもりっきりになるし、中川は外装を磨き出すとまったく外出しない。ふたりが、2012年にパリで出会ったのは僥倖ではなかったか。

【関連記事】