「子どもと向き合う時間が絶対に必要だと思った」――セクシーさを封印して、よきお父ちゃんに 高橋克典の年齢の重ね方
朝ドラでヒロインをやさしく見守る父を演じた、俳優の高橋克典さん。かつて演じた「サラリーマン金太郎」や「特命係長 只野仁」のような大胆不敵で女性にモテるキャラクターとはまったく異なる役どころに、新鮮さを覚えた視聴者も多い。私生活では中学生の息子がいる。育休をとったときは「子どもに逃げている」という言葉が耳に入ったという。常に視線にさらされながら、自分が必要だと考える方向にゆるやかに変化を重ねてきた。ドラマデビューから30年、高橋さんが考えるよい年齢の重ね方とは。(取材・文:古川雅子/撮影:猪原悠/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
「ようやくふつうのお父さんの役をいただけた」
目尻に思い切り皺を寄せ、やさしい笑顔で娘を見つめる。「舞。お父ちゃんはな、舞が自分の夢に向かってがんばってるのがうれしいねんで」 NHK連続テレビ小説「舞いあがれ!」のヒロイン舞の父、浩太のせりふだ。高橋克典さんが演じた浩太は、子どもたちに自由に夢を追いかけてほしいと願う、ふつうの父親だった。 「ようやくふつうのお父さんの役をいただけました。僕は、強いキャラのエンターテインメント性の高い役を多く演じさせていただいてきました。若いときは恋愛ドラマ、30代はヒーローもの、最近だとクセのある悪役など。そういう凝った役作りも毎回、やりがいを感じて取り組んでいますが、浩太さんは子どもを愛し日常を大切にする、今の自分自身を反映できる役でした。僕にとっては、そういう人を演じるのは、若いころから憧れていたことなんです」 ドラマデビューは1993年。30代で主演したドラマ「サラリーマン金太郎」や「特命係長 只野仁」が大ヒット。コミカルだったりお色気だったり、視聴者サービス満点のエンタメ路線でお茶の間に浸透した。 「僕は歌が好きでこの世界に入りました。極端な役は、自分自身との共通点を探し、ふくらませてキャラクターを構築していくんですが、浩太さんは、自分自身の日常にある感情を使って演技をするイメージでした。そういう自然な芝居が求められるもののほうが、演技の基礎が問われるんです」