「ピッティ」が日本との連携強化 JFWOとの1年契約の狙い
古茂田事務局長は、協業の背景について「JFWOと『ピッティ』は、共にコレクションとテキスタイル事業の両方に取り組んでいる共通点があり、協業は自然な流れだった。日本ならではの優れたクリエイションや素材開発力を、『ピッティ』という世界への扉を通じて輩出していきたい。そのための道を作るにはパリだけではなく、イタリアでもルートを広げる必要があると感じていた」と語った。日本人デザイナーや企業の参加を支援するための資金や仕組みについては、現在思案中だという。
過渡期の合同展ビジネス
前回の「ピッティ」では、自国イタリア人バイヤーの来場者が前々回に比べて7%減少し、総来場者数は約1万5000人で、1年前から2000人減り、来場バイヤー数も1年前から500人減少だった。一方で、外国からの参加企業数や来場バイヤー数は伸長しており、オランダやドイツ、中国などとの協業によるプロジェクトに手応えを感じている。JFWOとのパートナーシップ契約も、他国との連携強化を推進する取り組みの一つだろう。
また、昨今の「ピッティ」はスタイルにも大きな変化がある。かつては“イタリアン・クラシコ”に強い合同展示会という印象が強かったものの、最近ではストリートウエアやスポーツ用品、ペット用品、古着を扱うなど、コンテンツが多様化している。タッコーニ=スペシャル・イベント・コーディネーターは「世の中は常に変化しており、われわれもライフスタイル化へのシフトを進めている。次回1月にはランニングのコーナーをイギリスのショップと企画しているし、今後はサイクリングの計画もしている」と語った。その変化に対し、チャンキ=チーフ・コミュニケーション・オフィサーは「バランスが大切」と説明する。「私たちは物を売る側ではなく、あくまで場を提供する立場。トレンドを取り入れることは大切だが、かねてからの伝統は一貫している。例えスタイルが変化しても、常に新しい視点を持ってもらえるような場を提供するという部分は変わらないし、そのバランスが『ピッティ』の強みだと思う」。
1月に初のショー形式での発表を控える桑田デザイナーは、「今の『ピッティ』は、クラシックから変化し始めた時期であり、その変化に対していろいろな意見がある大変な立場だと思う。僕はサヴィル・ロウ出身なのでイタリアン・クラシコに寄与できるエレメントは何かしら持っていきたいし、『セッチュウ』が『ピッティ』の多様なスタイルを折衷できれば」と述べた。