ビジネスで「戦わずして勝つ」方法を、孫子の兵法に学ぶ
「孫子の兵法」は、欧米のビジネス・スクールでも「戦略書の原典・原点」として取り上げられる、ビジネスパーソン必読の実益書だ。東洋思想研究者・田口佳史氏の著書『超訳 孫子の兵法 「最後に勝つ人」の絶対ルール』からの抜粋で、現代のビジネスシーンに当てはめ孫子の教えを超訳した、「ビジネスで勝つ」テクニックをお届けする。 【この記事の画像を見る】 ● 「連戦」してはならない 百戦百勝は、善の善なるものに非ざるなり。 戦いにおいては、自分も相手も傷つかないように勝つことを考えなければならない。どちらが勝っても負けても、傷つけば疲弊し、回復に大変な時間と労力がかかるからだ。だから一番いい勝ち方は、戦わずに勝敗を決することなのである。 ふつうに考えれば、「百戦百勝」はこれ以上ないというくらい、すばらしいこと。でも、孫子は「そんなのはちっとも褒められたものではない。むしろ非常に危うい。なぜなら現実に戦ってしまったんだから」と言っています。 戦う以上、互いが無傷でいられることはまずありません。それは何も実際の戦争に限らず、ビジネスにおける戦いだって、日常の諍い事だってそう。 一度争いを始めると、どうしたって互いに何らかの傷を負います。たとえ勝ったとしても、傷つけた相手の怨みを買います。「いつか仕返しをしてやる」と、新たな戦いの火種を植えつけることにもなります。 それに、勝ったほうだって、無傷というわけにはいきません。
壊滅的な打撃を被った敗戦国の戦後復興を担うのは戦勝国であるように、どんな戦いでも勝者は事の後始末に大変な苦労を強いられるのです。 たとえば、相手の怨みを封じるために、心身に受けた傷を治してあげるとか、経済的な手当をしてあげるとか。お金と労力のかかる、いろんなサポートが必要になるでしょう。 だから、戦っちゃあいけない。 もちろん、人生は戦い。勝つためには闘争心が必要です。 ただ、実際に戦う前に、自分も相手も傷つかない勝ち方、つまり戦わずに交渉で勝敗を決するような方法、もっと言えば相手に「喜んで勝ちを譲ります」と言わせるくらいの方法を考えなくてはいけないのです。 次に、そのための具体的な方法を見てみましょう。 ● 戦う前に相手の戦闘心をくじく 上兵は謀(ぼう)を伐(う)つ。 戦う前にまずたしかめるべきは、相手に戦う気があるかどうかだ。そのうえで「ある」とわかったら、相手が戦う気をなくすように仕向けるといい。それもまだ戦いの芽が小さいうちに摘み取ってしまうことが望ましい。 「天下の難事は必ず易きより起こり、天下の大事は必ず細(ちいさ)きより作(お)こる」 これは老子の言葉。天下の難事・大事といえども、事の起こりは簡単に解決できる些細なものだったという意味です。