いったい、景気は良いのか、悪いのか? 9月の月例経済報告をどう読む? 小幡績(経済学者)
19日、政府は9月の月例経済報告を発表し、現状については、「景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」とした。いったい、景気は良いのか、悪いのか? そもそも、「月例経済報告」をどのように考えればいいのか。経済学者、小幡績氏に聞いた。 ---------- 2014年9月の月例経済報告をどう読むべきか? ということだが、そもそも、内閣府、昔で言えば、経済企画庁が公表するこの文書の読み方は、難しい。私は昔は霞ヶ関勤めをしていたから、霞ヶ関文学と揶揄されるこのようなまどろっこしいものにもなじみはあるのだが、一般には、わかりにくいかもしれない。しかし、わかりにくくていいのだ。わかりにくいからこそ、やさしい。わかりにくすぎるので、誰も読まない。月例経済報告を隅から隅まで読む人は、それを仕事とする人だけだ。わかりにくいので、みんなわかるところだけ読む。それは、先月との違いだ。内閣府自身もご丁寧に、冒頭に先月との対比表をつけてくれている。 読み手が変わったところだけしか読まないのであれば、書き手もそこだけに注力する。その結果、本当に変わったところだけが重要になっていく。だから、ますます読み手は変化だけを読む。書き手自身も、そこだけを読ませようとする。 これが、月例経済報告である。この結果、景気がいい、と書いてあるからと言って、景気がいいわけではない、となる。「景気は、緩やかな回復基調が続いており」という8月の表現から、「景気は、このところ一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている。」という9月の表現に変わった、ところだけが重要なのである。つまり、9月、今、景気がいいかどうかは、ここからは判断ができず、「このところ一部に弱さもみられるが」という表現が加わったことから、8月よりは9月の方が相対的に言うと景気は悪くなったことは間違いがない、ということだけが判断できるのである。景気の絶対水準については、自分で判断しなければならないのだ。 そうなると、政府の経済分析担当としてはどうなんだ、ちゃんと絶対水準も判断しろ、という批判が出るだろう。しかし、この批判は間違っている。なぜなら、景気には絶対水準というモノは存在しないからだ。景気は景気循環で、良くなったり悪くなったりする。循環だから、良くなった後悪くなり、悪くなった後良くなるのだ。この循環、この変化、つまり、景気転換の潮目が重要なのであり、この循環が存在する水準、端的に言えば、日本経済の潜在成長力、あるいは自然成長率水準、もっとわかりやすく言えば、日本のGDP水準の実力水準、これとは関係ないのだ。