選手のフィジカル不足と向き合い、iPadで試合の分析も "普通の体育会"ラグビー部、マネージャー15人それぞれの役割
マネ長の悩み
15人のマネージャーを束ねる「マネ長」は、岡田彩瑛(4年、立川)。最高学年で迎えたラストシーズン。肌を刺す空気感、日に日に、ピリピリと、とがってくる現実を感じる。 勝てない。どうしたって、選手たちはナーバスになってしまう。ささいなことが、気になってしまう。水出し、練習道具の準備、テーピング。その一つ一つの所作、マネージャーたちもミスは許されない。そんな空気感だ。 「だから、マネージャーの後輩たちを注意する時もあります。本音を言えば、嫌われ役になんて、なりたくはない。でも、そうやって厳しく接することが、互いのためになる時も、あると思うんです。特に、いまは、チームが勝つために」 嫌われ役になることで、心が折れそうになる時もある。そんな時、同期マネージャーの2人が、支えになってくれる。 丁野真菜(厚木)は、岡田と同じく健康福祉学部の理学療法学科に通う。筋肉の構造、けがの予防法、テーピングに効果的なストレッチ。ラグビーに役立つ専門知識を、岡田と2人で一緒になって、チームに注ごうとしてきた。 高校時代はダンス部で、ガチの体育会系だった。だから、選手たちの気持ちがわかる。チームのブログに、こう、つづっている。「昨年1年間、しんどい練習を積んできた2年生が、今年になって試合に出場できる機会が増えた。彼らが活躍する姿に、涙腺が破壊されます。そういう姿を見られることが、マネージャーのやりがいです」 川添彩加(徳島北)は看護学科。看護師を夢見て都立大に入学して、卒業後は看護師になる。入部の動機は、「けがの簡単な手当てを覚えれば、将来に生かせそうだな」。それが、変わった。 「マネージャーの仕事って、奥が深い。選手のちょっとした表情の変化やしぐさを観察することこそ、大切なんだって気づきました。そうやって観察することが、練習や試合で、個々に適切なけがの対応につながる。温かいコミュニケーションと人間関係にもつながる。それこそが、将来につながるんだって」 この秋、3人はドライブに出かけた。紅葉狩りをして、温泉に入って、おいしいご飯を食べた。授業やバイトや部活の日常を忘れて解放感に浸りたかったはずが、気づけば、結局、会話の中心はラグビー部のあれこれに戻っていた。 「やっぱり、絶対に、勝ちたいよね」と。 ラグビーの試合で、実際にグラウンドに立てる選手は15人だ。 都立大の15人のマネージャーは、彼らと一緒に、戦ってきた。 80分間、一人ひとりのマネージャーが、一人ひとりの選手の背中を押し続けてきた。 入れ替え戦も、そう。もっと、もっと、強く、後押しする。 思いを、届けるために。 思いを、結果につなげるために。
中川文如