選手のフィジカル不足と向き合い、iPadで試合の分析も "普通の体育会"ラグビー部、マネージャー15人それぞれの役割
「正」に託す
春先。選手たちの積年の課題、フィジカル不足と向き合った。選手たちと、一緒に。 選手もマネージャーも一緒になって、4、5人の班をつくった。LINEグループをつくって、意見交換を重ねた。「昨日のウェートトレーニング、どうだった?」「ベンチプレスの目標数値、ちょっと低くない?」「たんぱく質が豊富な食事をとった方がいいよ」「じゃあ、一緒にご飯に行こう!」。例えば、そんな具合に。 練習前、ちょっと早めにグラウンドに姿を見せる班もあった。走力アップのためだ。 中距離走の目標タイムを設定して、選手が走る、マネージャーは測る。「ファイト!」。そんな応援が飛び交った。 夏合宿が終わると、マネージャーはペンとメモを手に練習を見守るようになった。選手一人ひとりのパスミスや捕球ミスの回数を「正」の字で記録する。ナイスプレー、ポジティブな声かけの回数も記録する。 その「正」の数を一人ひとりにフィードバックして、プレーの精度とモチベーションのアップを促した。 秋が深まり、冬の足音が近づいてくる。すると今度は、練習場の片隅でiPadを囲むマネージャーが現れた。 もちろん、さぼっているのわけじゃない。終わったばかりの試合の分析をしているのだ。選手一人ひとりが、どんなプレーを何度試みて、何度成功したか、何度失敗したのか。スクラムやラインアウトの場面を抜き出して、ユニットごと、ポジションごとにプレーの巧拙をわかりやすく可視化する動画も編集した。自分たちのチームも、もちろん対戦相手も。 ひと通りのルールくらいは覚え込んだつもりだったけど、いざ、こうやって試合を見返してみると、案の定、新たな気づきだらけだった。コーチの知恵も借りながら、1試合80分間の分析を終えるのに、3人がかりで6時間はかかる。この時期、授業後の夜の練習場、もう、かなり、肌寒い。それでも、分析担当のマネージャーたち、部室にこもろうとはしなかった。練習場の片隅で、背筋を震わせながら、iPadとにらめっこを続けた。 選手たちと一緒の空間で、部活に関わり続けたかったから。 そうすることが、チームの一体感を高めることにもつながる、チームの勝利に近づけると信じていたから。 リーグ戦の7試合。思いは、届かなかった。