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ライブハウスができるまで 第6回 コロナ禍の中オープン決定、奮闘する店長が抱く不安

配信

音楽ナタリー

店長であるスガナミユウに話を聞きながら、東京・下北沢のライブハウス / クラブ・LIVE HAUS(参照:下北沢に新たなライブハウス「LIVE HAUS」4月オープン)が完成するまでを追うこの連載。LIVE HAUSは当初4月オープンの予定だったが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により開業の延期がアナウンスされていた。しかし東京都が社会経済活動再開のためのロードマップをステップ3に移行したことで、8月から短縮営業という形でオープンすることが決定した。最終回となる今回は、LIVE HAUSが営業自粛期間に実施した新たな試みとその手応え、オープンを控える今の心境についてスガナミに話を聞いた。 【写真】LIVE HAUSの看板。(メディアギャラリー他12件) 取材・文 / 下原研二 撮影 / 斎藤大嗣 ■ 1人勝ちしない LIVE HAUSは新型コロナウイルス感染拡大に伴う営業自粛期間中にライブ配信企画「LIVE HAUS SoundCHECK」を始動。これまでに曽我部恵一やカジヒデキ、KONCOS、松田“CHABE”岳二、OCHA∞MEなどさまざまなアーティストが出演してきた。この企画は事前収録となっており、現場で新型コロナウイルスへの感染がなかったことを確認するため撮影後2週間以上経過してから配信を行うなど感染防止対策を徹底している。 「新型コロナの影響で当初予定していた4月のオープンが延期になって、すぐにその後の方針についての話し合いをしたんです。まずライブ配信はできるよねという話になって、LIVE HAUSがやるならどういう内容にすべきかを詰めていきました。新規のライブハウスやクラブは営業しながら音響システムや音響チームの経験値を上げていくものですが、僕らはオープン前に自粛に入ったのでそれができなかった。そこで『LIVE HAUS SoundCHECK』というタイトルを付けて、アーティストにライブをしてもらうことで箱の鳴りや機材をチェックしつつPAの経験値を積むことにしたんです」 「LIVE HAUS SoundCHECK」では収益をアーティスト、撮影クルー、LIVE HAUSの3者で均等に分配。これには「1人勝ちしない」というスガナミらしい真摯な思い込められている。 「企画の構想自体は3月頃からあって、ちょうどその時期にいろいろなところから『ライブハウスを救おう』という声が上がるようになったんです。アーティストの方々もドネーション企画を立ち上げてくださって。ライブハウスで働く者として純粋にありがたいという気持ちがありつつ、一方で大変なのはアーティストやスタッフさんも同じなのではという思いがありました。それに、ライブ配信を始める以上は映像作品としてクオリティの高いものを提供したかった。費用を考えると自分たちで撮影するという選択肢もありましたが、餅は餅屋というか、その道のプロに依頼するのがベストではないかと考えたんです。そういった経緯から収益は均等に分配することにしました。お金の面について話すと、これだけライブ配信が乱立している中でやっていくわけですから、数字的に成功するときもあればそうでないときもあります。例えばチケット代が1000円だとすると、配信サービスの手数料が15%ほどかかるので850円を3等分することになる。それだと100人の視聴者がいても、それぞれに入るお金は3万円いかないくらい。LIVE HAUSが通常営業した場合の平日目標が10万円なので、ライブ配信だけで経営を続けるのは難しいのが現実ですね」 ■ 配信は代替えにならない 2月に大阪で新型コロナウイルスの集団感染が発生して以降、あたかも3密の温床であるかのように扱われてきたライブハウス。その多くが有料制のライブ配信やクラウドファンディングによる資金調達などで急場をしのいでいるのが現実だ。スガナミは「LIVE HAUS SoundCHECK」での経験を通して、配信と実際のライブではそもそもの役割が異なると語る。 「はっきり言っておきたいのですが、配信はライブハウスやクラブの在り方の代替えにはなりません。1回の公演をより多くの人に観てもらうことが目的であれば配信は有効だろうし、配信でしか表現できない演出もあると思います。ただアーティストのツアーが1回の配信で済んでしまう、と考えるとわかりやすいかもしれません。生のライブを体感することができるという現場の醍醐味はもちろんですし、アーティストが土地土地を回ることでライブハウスやクラブが営業できて従業員、フリーランスのスタッフが仕事に就けるんです。それにライブハウスでは毎日違うイベントが行われて、自ずとお客さんも毎日変わるわけじゃないですか。そういった人たちがライブが終われば近くの飲食店でその日の感想を話し合ったりするわけで周辺地域への経済効果だってある。これはライブハウスやクラブに限らず、ミニシアターや劇団の地方公演など生で体感する芸術全般に言えることだと思います。それに駆け出しのバンドからするとライブハウスはボトムアップの場所。知名度の低いバンドの有料配信を観る人はおそらくほとんどいないと思うので、小箱になるほどより配信とはマッチしないんです。もちろん音楽産業全体を見れば、ある程度ライブ配信で成功している部分もあるけれど、そうなると行政の支援は配信事業へのサポートが中心になっていく。本当はどのお店も2月から続く赤字の補償をしてほしいだけなのに、『配信で新規事業をやるなら支援金を出しますよ』という話にすり替わってきているんです。これって要は僕らに『新規事業の競争をしろ』と言っているようなもの。知名度の低いライブハウスやクラブは自然と淘汰されることになります」 ■ 配信に依存しないために LIVE HAUSでは「LIVE HAUS SoundCHECK」と並行して、店先にホットサンドの屋台「HauStand」を出したり、店内ロビーの壁面を使ってギャラリー展を開いたり、下北沢のレンタルスペース・下北線路街 空き地で野外イベント「LIVEHAUS Garden」を定期開催したりと新たな取り組みを次々と展開している。これらはスタッフの雇用を守るため、音楽を止めないための施策なのだそう。 「僕たちがコロナ禍に直面して企画した施策は基本的に事態の終息後にも運用できるものを念頭に置いていて、ホットサンドは8月以降LIVE HAUSの店内でも提供する予定で、ギャラリーではTシャツの展示をメインに展開していきます。『LIVEHAUS Garden』については“窓を開け、音の鳴る庭へ”をテーマにしていて、生の音楽を楽しめる日常を少しずつでも取り戻すために企画したもの。ライブハウスはガイドラインに基づいて縮小営業してもいいことになりましたけど、人々の不安は払拭されないままで自粛要請の期間と何ひとつ変わっていないのが現状じゃないですか。そこで僕らは、LIVE HAUS店内を使うという発想を捨てて、少しでも不安が軽減できるよう野外イベントから始めるべきだと考えたんです。毎週末、オープンエアで音楽を体感できる公園のようなイメージですね。自粛要請明けの2日後に第1回を開催したのですが、イベントの様子を見ていて、お客さんも出演者も生の音楽を求めていたのだと実感しました。あと『

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