「過去最酷」今季J1「ボトム4」からの脱出(1)「戦力流出」と「得点力不安」湘南と福岡
今季のJリーグは、例年になく厳しいシーズンになる。コロナ禍における特異なシーズンとなった昨季は下位リーグへの降格がなかったが、その分、今季は20チームで戦うJ1から4クラブが去らねばならないのだ。 【一覧図】湘南と福岡の今季IN&OUT Jリーグは、他に例がないような厳しいリーグだ。どのチームにも優勝の可能性がある一方、降格の危険性があらゆるところに潜んでいる。 今季も全チームが心機一転でのスタートではあるものの、昨季の成績は考慮されねばならない。前年の順位を当てはめれば、J2からの昇格2チーム、また昨季J1の17位、18位が現状での「ボトム4」となる。すなわち、下から順にアビスパ福岡、徳島ヴォルティス、湘南ベルマーレ、ベガルタ仙台だ。また、昨季17位のベガルタ仙台と同勝ち点だった16位の清水エスパルスも含めて考えるべきだろう。 この5チームを、「戦力」と「監督力」で診断する。
■「戦力流出」+「得点力不安」の湘南、福岡
戦力流出が痛いのは、湘南と福岡だ。湘南はこれまでにレンタルで出していた選手の完全移籍移行など、昨季のチームにいなかった選手も含むものの、このオフに18人がクラブを離れた。痛いのは、齊藤未月や鈴木冬一といった若い才能を含めた主力が複数名抜けたことだ。対して新戦力は13人を迎えたが、新卒選手や下位リーグからの獲得がメイン。量のみならず、質もダウンの感が否めない。 5年ぶりのJ1昇格をつかんだ福岡も、昨季の主力が複数名、チームを去った。チーム最多得点者だった遠野大弥、最終ラインの要となった上島拓巳、増山朝陽といったレンタル加入していた選手が、所属元へと帰っていったのだ。
この2チームには、他にも共通点がある。得点力への不安だ。 湘南は昨季、J1最少の29得点に終わった。チーム最年長ながら最多6得点を挙げた石原直樹には感嘆するばかりだが、攻撃陣の補強が心もとない。7年ぶりに戻ってきたウェリントンだが、2ケタ得点したのはJ2でのみ。ウェリントン・ジュニオールも、ポルトガルで得点を量産していたわけではない。 昨季の福岡は、J2最少失点という守備力がベースとなった。ただし、引いて守るばかりではなく、高い位置からのプレスも効いていた。就任1年で見事J1へと引き上げた長谷部茂利監督の下、スタイルが大きく変わることはないだろう。そうだとすれば、昨季11得点の遠野らの退団は倍の痛みを伴うこととなる。 過去のシーズンを振り返っても、得点力が低いチームが降格する例が圧倒的に多かった。湘南と福岡がJ1を戦い、ともにJ2降格を味わった2016年も、この2チームが得点数ワースト2だった。ちなみに福岡は、初めてJ2へ降格した2001年以降、J1残留に成功したことはない。こうした「前例」を覆すことは、決して簡単ではない。
サッカー批評編集部