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ベテルギウスの減光は、爆発の前兆ではなく「恒星黒点」が原因か? - MPIA

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マイナビニュース

2019年末から天文界で大きな話題となっていた「ベテルギウス」の減光の原因について、ドイツのマックス・プランク天文学研究所(MPIA)を中心とする研究チームは2020年6月29日、恒星の表面に現れた「恒星黒点」が原因ではないかとする論文を発表した。 【写真】ESOの望遠鏡が撮影した2019年1月と同年12月のベテルギウスの画像 論文は同日付けの「Astrophysical Journal Letters」誌に掲載された。 ベテルギウスの大きな減光 ベテルギウス(Betelgeuse)は、太陽系から約500光年離れたところにある恒星で、オリオン座を形成する恒星のひとつであり、またおおいぬ座のシリウス、こいぬ座のプロキオンとともに冬の大三角を形成している。 ベテルギウスは赤色超巨星と呼ばれる種類の恒星で、すでに恒星の進化の最終段階にあり、今後10万年以内に超新星爆発を起こすと考えられている。太陽と比べると約20倍の質量、約1000倍の大きさをもち、太陽系の中心に置けば、木星の軌道にほぼ到達するほどの規模になる。 ベテルギウスのような赤色巨星は、頻繁に明るさが変化することが知られている。死の間際にある赤色巨星は、内部で核融合を起こすための燃料供給がなくなりつつあるため、エネルギーを放出するプロセスが変化する。その結果、恒星が肥大化し、不安定になり、数百日から数千日の周期で脈動するためである。 しかし、2019年10月から2020年4月にかけて、ベテルギウスが最大で通常時の約40%にまで暗くなるという奇妙な減光が発生。天文学者や天文ファンの間で大きな話題になった。なお、5月には減光前の明るさに戻っていることが確認されている。 この減光について、超新星爆発の前兆ではないかという説が取り沙汰されることもあったが、実際にはその可能性は低いとされ、ベテルギウスから放出されたダスト(塵)が原因ではないかという説が有力視されてきた。 赤色超巨星はその大きさのため、恒星の表面にかかる引力は、同じ質量で半径が小さい星にかかる引力よりも小さい。そのため、このような恒星の外層部分は比較的簡単に放出されることが知られている。そして、放出されたダストが、ちょうど地球から見たときに邪魔をする位置にかぶり、ベテルギウスの光を吸収したことで暗くなったように見えたのでは、という説である。 ダスト説は否定、代わりに恒星黒点説が浮上 そこで今回、マックス・プランク天文学研究所のThavisha Dharmawardena氏らは、このダスト説を検証するため、南米チリにあるサブミリ波電波望遠鏡「アタカマ・パスファインダー実験機(APEX)」と、ハワイにある「ジェイムズ・クラーク・マクスウェル望遠鏡(JCMT)」を使い、サブミリ波(テラヘルツ波)でベテルギウスを観測したデータを分析した。 ダストは低温であるため、可視光や赤外線では観測しにくいが、サブミリ波を使えば、こうしたダストから出るさまざまなスペクトル線を観測することができる。 ところが、データを分析したところ、ベテルギウスがサブミリ波の波長域でも20%も暗くなっていることが判明。もしダストが存在したとすれば、ダストから出るスペクトル線によって、これほど暗くなるはずはない。 研究チームはさらなる分析を行った結果、サブミリ波領域での明るさの低下は、ダストの量の増加に起因するものではないことを確認。すなわち、ベテルギウス自体が暗くなったものであることを突き止めた。 研究チームはまた、ベテルギウスの平均表面温度が低下していることも発見した。恒星の明るさは、星の直径と表面温度に依存している。もし、恒星の直径だけが小さくなれば、どの波長でも同じように光度が減少するが、温度が変化すれば、放射される放射線の電磁スペクトルに影響を与え、波長によって観測できる明るさに変化が生まれる。そして研究チームは、可視光とサブミリ波で測定された明るさの変化は、ベテルギウスの平均表面温度が、約200℃低下していることを示していると結論づけた。 さらに、研究に参加した欧州南天天文台(ESO)のPeter Scicluna氏は、ESOの望遠鏡を使った観測で、ベテルギウスの表面に、明るさの異なる領域が発生していることを確認。このことから、ベテルギウスの表面に、太陽黒点のような巨大で冷たい「恒星黒点(starspot)」が発生し、それがベテルギウスの表面の50~70%を覆い、減光が生じた可能性が高いとしている。 恒星黒点は、巨星と呼ばれる種類の恒星ではよく現れることがわかっているが、今回のように表明の大半を覆うほどのものが確認されたのは初めてだという。また、その寿命についてもわかっていないことが多いものの、計算では、ベテルギウスが大きく減光した期間と関連性があることが示されたとしている。 ちなみに太陽の場合、約11年周期で黒点の量が増えたり減ったりすることがわかっている。一方、ベテルギウスのような巨大な恒星の場合にも同じようなメカニズムがあるかどうかはわかっていない。ただ研究チームは、ベテルギウスが以前にも、例年より暗く減光したことがあったことから、周期的なものである可能性はあるとしている。 Dharmawardena氏は「今後数年間の観測で、ベテルギウスの明るさの急激な減少が、恒星黒点の周期に関係しているかどうかがわかるでしょう。いずれにしても、ベテルギウスは今後の研究にとってエキサイティングな天体であり続けるでしょう」と締めくくっている。 参考文献 ・Betelgeuse - a giant with blemishes | Max Planck Institute for Astronomy ・[2006.09409v1] Betelgeuse fainter in the sub-millimetre too: an analysis of JCMT and APEX monitoring during the recent optical minimum 鳥嶋真也(とりしましんや) 著者プロフィール 宇宙開発評論家、宇宙開発史家。宇宙作家クラブ会員。 宇宙開発や天文学における最新ニュースから歴史まで、宇宙にまつわる様々な物事を対象に、取材や研究、記事や論考の執筆などを行っている。新聞やテレビ、ラジオでの解説も多数。

鳥嶋真也

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