自民党新総裁に石破氏が選出:地方創生を中核に据えた成長戦略の推進に期待:財政・金融政策の正常化も後押しか
物価高対策、経済対策はピンポイントで
石破氏は、物価高によって国民生活が圧迫されていることを踏まえ、追加の物価高対策、経済対策の必要性に言及している。この点から、新政権のもとで、秋には補正予算編成を伴う経済対策・物価高対策が打ち出されることが予想される。能登地方の災害も、補正予算編成を後押しすることになるだろう。 これこそが、新政権の財政政策姿勢を占う、最初の試金石となるのではないか。石破氏は弱者支援のリベラルな考えが強い一方、財政健全化を重視していることを踏まえると、バラマキ的な政策にはならないのではないかと想定される。低所得者や零細企業を集中的に支援する形の補助金制度に修正されていく可能性もあるのではないかと考えられる。仮にそうなれば、望ましいことだ。
アベノミクスの総括が必要に
一般に、新たな政策を検討する際には、過去の政策の功罪をしっかりと検証することが必要だ。しかし長きにわたって大きな影響力を持ってきたアベノミクスについては、岸田政権、菅前政権共にその評価を避けてきたように見える。石破政権には、アベノミクスの総括を是非行って欲しい(コラム「自民党総裁選ではアベノミクスの功罪の評価を」、2024年8月30日)。実際、石破氏は、アベノミクスの功罪の検証をすることが必要と主張している。 アベノミクスとは、第2次安倍晋三内閣が打ち出した経済政策であり、デフレからの脱却を目的として大胆な金融政策(第1の矢)、機動的に財政政策(第2の矢)、民間の投資を喚起させる成長戦略の実施(第3の矢)からなる。このうち第3の矢は重要な政策であることは疑いがない。 他方、本来は第3の矢を側面から支える裏方の役割であるはずの第1の矢、第2の矢が、むしろ前面に出てしまい、しかも長期間実施されたことがアベノミクスの大きな問題点だったと思う。主客が逆転してしまったのである。 行き過ぎた金融緩和の一つの弊害は、急速な円安という形で表面化している。日本銀行は今年3月から金融政策の正常化に着手している。それによって円安は修正されつつあるとみられるが、既に見たように、石破氏はそうした日本銀行の政策を支持している。 石破氏は8月7日に発行した著書「保守政治家 わが政策、わが天命」(講談社)の中で石破氏は、「『アベノミクス』」とは一体何だったのか、その功罪についてきちんと評価すべき時期が来たのではないでしょうか」と述べている。 また石破氏は、問題は、禁じ手でもあった異次元の金融緩和を「延々と10年続けてしまったこと」であり、その結果、「国家財政と日銀財務が悪化」したとしている。金融緩和については、「アベノミクスの3本の矢であった成長戦略につながる構造改革を大々的に実施して、生産性の向上を図ることこそが、日本経済の病に対する治療法だったのではないでしょうか」としている。 さらに、「日銀財務の悪化、財政規律の麻痺、銀行の体力低下などマクロ的な危機にどう対処するか」、「経済財政諮問会議から一歩進んだ組織を常設して、いわゆる経済安全保障に加えてマクロ経済運営について危機に備えた体制を作っておくべきだと思います」と、新たな組織の創設も提言している。 アベノミクスについての評価は、自民党内でも様々であろうが、日本経済の再生に向け新政権下で経済政策をしっかりと前に進めるためには、石破氏には公約通りに、まずアベノミクスの功罪の検証を進めて欲しい。