喜三翼音さん無言の帰郷 父・鷹也さん「ゆっくり休んで」 奥能登豪雨、12日で3週間
●輪島・久手川犠牲の中3 奥能登豪雨で犠牲となった輪島市輪島中3年の喜三翼音(きそ・はのん)さん(14)=同市久手川(ふてがわ)町=の遺骨が11日、父鷹也(たかや)さん(42)に伴われ、自宅近くの祖父誠志(さとし)さん(63)宅に到着した。豪雨の発生から12日で3週間。無言の帰郷となり、連日、まな娘の捜索に加わった鷹也さんは「ゆっくり休んでほしい」と気丈に話した。 ●「おかえり」言えず 翼音さんが家ごと濁流にのまれたとみられる自宅跡には11日、花束が供えられていた。豪雨が発生して3週間となる12日、地元で葬儀が営まれる。 翼音さんは9月21日午前、自宅に1人でいたところ、連絡が取れなくなった。付近を流れる塚田川で土石流が発生し、家ごと巻き込まれた可能性がある。 9月30日に福井港沖で発見された遺体が今月3日、DNA型鑑定で翼音さんだと判明し、鷹也さんはようやく翼音さんと再会を果たした。「『おかえり』と声を掛けたかったが、とてもそんな状況じゃなかった」。鷹也さんは当時を振り返り、声を詰まらせた。 遺体は荼毘(だび)に付され、元日の能登半島地震後、誠志さんが拠点としている野々市市内で安置された。遺骨とともに鷹也さん、誠志さんと輪島に戻った祖母悦子さん(64)は輪島塗職人の誠志さんが輪島朝市に構えた店を手伝う孫の姿を思い起こし「かわいい子でした。翼音が見つかってから毎日泣き暮らしています」と涙で目をはらした。 ●12日に葬儀 葬儀は12日午前、輪島市河井町の真宗大谷派正覚寺で執り行われる。鷹也さんは「ちゃんと見送ってあげたい」と口を結んだ。