参入16年目ついに!「感無量」岡山初J1に木山監督が涙「初めて大きな海に飛び立つ渡り鳥みたいなもの」
◆J1昇格プレーオフ▽決勝 岡山2―0仙台(7日・岡山) 今季J2で5位の岡山が同6位の仙台を2―0で下し、2009年のJ2参戦から、初めてのJ1昇格を決めた。前半20分にMF末吉塁(28)がループシュートで先制点を挙げ、後半16分にはMF本山遥(25)が追加点を奪って2―0で勝利。昇格プレーオフ(PO)3度目の挑戦で、初のJ1昇格が決定。岡山に悲願のJ1クラブが誕生した。仙台は21年以来、4季ぶりのJ1復帰を逃した。 夢への扉が開いた。笑顔、歓喜、涙…。さまざまな感情があふれ出したスタジアムに、特別な空間が広がった。岡山が昇格PO3度目の挑戦で、J参入16年目で初のJ1昇格を決めた。就任3年目の木山隆之監督(52)は「感無量。全ての人たちと努力しあってたどり着いた結果。本当にうれしいを通り越えて、最高の気持ち」と瞳を潤ませた。 今季を象徴するサッカーを見せた。前線から激しくプレスをかける積極性で仙台を圧倒し、前半20分にエリア内で相手から奪ったボールを末吉がエリア左角付近からゴール右へループシュートで先制点を決めると、後半16分には本山が追加点。「2点目が入った時に勝利を確信した」と指揮官が話したように、最後はリーグ最多の無失点試合(20)を誇る堅守で守り抜いた。 プロスポーツチーム不毛の地―。かつてのことだが、岡山には、そう言われてきた過去がある。隣県の広島、兵庫がプロスポーツで盛り上がる中、Jリーグも、プロ野球も、どこか遠くの存在だった。ただ、06年の設立以降、地元のクラブを応援しようとする熱は広まり、今ではスタジアムに向かう通りには旗がはためく日常がある。また、この日のチケットは即日完売し、来場者1万4673人の倍以上となる約3万人が購入を求めた。今季から加入し、主将を務めるMF竹内も「サポーターはファジアーノ岡山というクラブの魂そのもの。誰一人欠けても、ここにたどり着かなかった」。クラブに関わる全ての人が主役だった。 郷土に古くから伝わる桃太郎伝説で「キジ」が鬼退治をしたことから、イタリア語で「キジ」を意味する「ファジアーノ」と名付けられたクラブ。初J1へ、木山監督は「初めて大きな海に飛び立つ渡り鳥みたいなもの。目的地はどこにあるか見えない中で、力強く飛んでいかないといけない。恐れず勇気を持ってぶつかっていく」。強敵ぞろいの日本最高峰の舞台で、大きく羽ばたく。(後藤 亮太) 【プラスα】経済面でもJ2と“天と地”の差 優勝賞金だけを比較しても、J2の2000万円に対してJ1は3億円。ここに理念強化配分金(J1の1~9位の9クラブで、順位に応じて総額16億2000万円を配分)なども加われば、クラブの予算規模は様変わりする。 2018年にJ2降格となり、翌19年に1年でのJ1復帰を決めた柏の18~20年の3年間を比較すると興味深い。J1だった18年の営業収入は41億5000万円だったが、J2だった19年は31億4000万円に。一方、J1再昇格となった20年は46億1300万円となり、約15億円ほど増加した。 チケット収入が確実に増えるほか、露出を期待するスポンサー収入、グッズ収入などの増加も期待される。J1とJ2では、あらゆる意味で“天と地”ほどの差がある。(岡島 智哉) ◆ファジアーノ岡山 ▽設立 2006年。09年にJリーグ加盟。 ▽キジが由来 「ファジアーノ」はキジを表すイタリア語。キジが岡山県鳥に指定されていること、「桃太郎」でキジが鬼退治で活躍したことから命名。マスコットの「ファジ丸」もキジがモチーフ ▽名物チャントは桃太郎 岡山発祥の「桃太郎」のリズムに合わせたチャント(応援歌)が有名。相手チームへの自己紹介をかねて、主にアウェー戦限定で歌われる。歌詞は「岡山です、岡山です。岡山、岡山、岡山です。もっかい言うけど岡山です…」と続く ▽染髪禁止の時期も クラブ方針により、所属選手は22年まで原則、髪を染めることが禁止されていた。23年に多様性を許容する社会情勢の変化を受け“解禁”とする声明を発表 ▽スタジアム 本拠地はシティライトスタジアム(岡山市、収容1万5479人)。ネーミングライツ導入前の愛称は「桃太郎スタジアム」だった。JR岡山駅から徒歩20分ほど。中国地方のJ1在籍は、広島に次いで2クラブ目 ▽主な歴代在籍選手 岩政大樹氏(元日本代表DF、2015~16年)、加地亮氏(元日本代表DF、15~17年)、GK一森純(現・G大阪、17~19年)、MF仲間隼斗(現・鹿島、18~19年)、MF佐野航大(現・オランダ1部NEC、22~23年途中)
報知新聞社