物材研、機械学習で超合金粉末の製造コスト削減。航空機エンジン部品など適用
物質・材料研究機構(NIMS)は30日、機械学習を適用することでニッケル(Ni)・コバルト(Co)基超合金の高性能・高品質な粉末を高収率で生産可能な条件を高速探索することに成功したと発表した。航空機エンジンの心臓部である高圧タービンディスク作製に適した粉末を低コストに製造できることも実証した。同技術によって粉末単価、試行回数・時間の大幅な軽減が可能となり、高性能・高品質・低コストな超合金粉末の早期製品化に寄与する技術と期待されている。 同研究チームは、高圧タービンディスク用Ni・Co基超合金の粉末製造を対象に、機械学習を利用し、専門家のノウハウ無しに「ガスアトマイズ法」と呼ばれるプロセスの最適化を実施した。その結果、過去のデータを使用することなく6回の試行で通常は10~30%程度の収率である高品質粉末を収率約78%で得られるプロセス条件を発見することに成功した。原料単価から見積もると、市販の粉末に比べ約72%のコスト削減に成功したことになる。 NIMSでは、長年の開発で培った耐用温度など超合金の特性を制御する合金設計技術と今回の手法を組み合わせることで用途に応じた機能を持った超合金粉末を安価に供給することが可能になると見ている。さらに同技術を企業の製造現場に実装し、これまで活用が不十分だったプロセスデータを蓄積・再利用することでさらなる品質向上・コスト削減が可能になると期待されている。 航空宇宙エンジン分野で金属3Dプリンティングの活用が急速に進む中、原料となる合金粉末の低コストな製造・供給が不可欠となっている。特に高圧タービンディスク用には耐用温度や塑性加工性に優れるとともに、真球度を高く、組織も均一にした高品質の超合金粉末を高収率・低コストで製造することが求められている。