新しい年に 音楽の力を信じ仲間たちと前を向いて進もう(井上芳雄)
井上芳雄です。本年もよろしくお願いします。昨年は新型コロナウイルス禍のなかで、今やれることを一生懸命やろう、自分の立場で役に立てることがあればできるだけのことをしたいという思いで過ごした1年でした。今年もそれは変わらないですが、僕自身のことで言えば、役者として歌手としてもっと学びたいし、ステップアップしていきたい。その思いも忘れずに、自分自身が成長できる年にしたいと願っています。 さて12月は、13日に催された『The Musical Day ~Heart to Heart~』というミュージカル俳優が集う配信フェスと、26日にWOWOWで放送された音楽番組『僕らのミュージカル・ソング2020 年末スペシャル』に出演しました。昨年は多くのミュージカル公演が中止を余儀なくされ、今も先が見通せません。それでも俳優たちは音楽の力を信じて、前を向いて進んでいます。そんな仲間たちの姿が頼もしく、僕も励まされた時間でした。 『The Musical Day』は俳優の上山竜治君が発起人となって催した配信ライブです。ミュージカル俳優が企画したフェスというのが特徴で、新しい動きだと思います。上山君は、昨年春のコロナ自粛中のとき、ミュージカル俳優が『民衆の歌』(『レ・ミゼラブル』の劇中歌)をリレー形式で歌う動画を配信した人です。僕はそのときは参加できませんでしたが、ミュージカルを愛していて、音楽でみんなを勇気づけたいという彼の思いに賛同して、今回参加しました。将来は野外フェスのようなイベントに育てたいという夢があって、その第一歩として、ブルーノート東京で無観客ライブを催しました。 出演者(五十音順)は大原櫻子さん、尾上松也君(収録)、海宝直人君(収録)、上山君、西川大貴君、平原綾香さん、宮澤エマさん、吉原光夫さん(特別出演)というミュージカル俳優に加えて、アーティストのROLLYさんがゲストで参加されました。34歳の上山君と同世代の若い俳優が中心となる中で、僕は先輩扱いされるという最近にないポジションなのが新鮮でした。初めて会ったり、舞台であまり共演したことがなかったりした人も多く、後輩たちが主になって新しいことをやろうとしているときに、力になりたいという思いがすごく湧いてきました。 結果は、トークで頑張りました(笑)。もちろん歌も一生懸命歌いました。エマさんとは『アラジン』から『ホール・ニュー・ワールド』をデュエット、大貴君とは『クレイジー・フォー・ユー』から『アイ・ガット・リズム』を彼のタップダンスと僕の歌でコラボ、ソロでは『ルドルフ ザ・ラスト・キス』から『明日への階段』を。それに加えて、場を盛り上げたいという思いで、光夫さんのことを、朝ドラ『エール』で歌った『イヨマンテの夜』でいじってみたりと、ついテンションが高くなりました。光夫さんものってきてくれて、やっぱり2人とも先輩として何か頑張らなきゃと思ったんですね。 そういえば演歌の番組に出たとき、大先輩の千昌夫さんや吉幾三さんが周りを盛り上げようとハイテンションになっているのを、そういうポジションなんだなと思って見ていたのですが、今回は自分がその立場になっていると感じました。 集まった顔ぶれによっては、自分もそういう立ち位置になる年齢や役割になったのだとあらためて思ったし、それだけミュージカル界に新しい世代が出てきたことを実感。大貴君と会うのは初めてでしたが、自分で脚本を書いたり演出をしたり、YouTubeチャンネルを運営していたりと、才能にあふれています。MCを務めてくれたエマさんも、トークや仕切りが上手だし、ドラマや映画にも出ていて多才です。いろいろな可能性を持っていて、それを若くして花開かせている感じがします。 僕らの世代は、光夫さんもそうでしょうけど、道を切り開くというか、違うジャンルに飛び出していくことをやってきたと思います。そこからもうひとつ新しい世代が生まれてきていて、それこそデジタルやSNSに強かったり、僕たちとは違う横のつながりや羽ばたき方があるのでしょう。すごく頼もしくて、うれしいことでした。今回その中心となった上山君は、すごくいい顔をしていて、何かをやり遂げた顔だったのがすてきでした。フェスの実現にこぎ着けるまでが大変だったと言ってましたが、人脈や人望があるからこそみんなが集まってきたのだろうし、それも素晴らしい才能です。