【追悼】ラクリマ~ALvino~ALICE IN MENSWEARKOJIが愛したギタリスト人生に輝く5曲
「THE WORLD IS YOURS」(’21)/ALICE IN MENSWEAR
2020年、コロナの蔓延とKOJIの病気発覚により、すでに7割完成されていた2ndアルバムの創作をやむなく中断。体調の快復を待って翌年再開された際に新しく作られた「THE WORLD IS YOURS」は、病室に差し込む眩しい朝の光や、術後に外の景色を見たくて車椅子で連れて行ってもらった際、久しぶりに見た空があまりにも美しくて、音楽家としてかたちにしたいと思う中で生まれたメロディーだったという。そして、音階の4つ目(ファ)と7つ目(シ)の音を抜いてオリエンタルな印象に仕上がる“ヨナ(47)抜き”という手法を用いたところ、特にそれを説明したわけではなかったにもかかわらず、“ヨナ”のない音階にmichi.がサビで“夜な夜な(ヨナヨナ)”という歌詞をつけることで、ふたりでドレミファソラシドを完成させるという、曲後半で聴ける泣きのギターソロと同じくらいドラマチックなエピソードだ。《貴方に捧ぐ この光もこの声も 奏でる音も止まる刻も 命も この世界を貴方にすべて…》という詞にも、KOJIの想いを汲んだような言葉が並ぶ。2月に文面で病状報告をした中で“自分はどんなに体調が悪くなっても、心の中には幸せが溢れています”と語ったKOJI。その源として、自分が憧れたプロギタリストの人生を歩めたこと、たくさんの出会いがあって生きていること、そして現在進行形でALICE IN MENWEARでmichi.と納得のいく音楽を創れていること、と綴っている。きっと、幾千粒の中からKOJIの魂が無意識に、安心して音楽人生を全うできる場所を見つけたんじゃないか…そんなことを思うのです。
「遥カナ航跡」(’21)/ALICE IN MENSWEAR
初ライヴの時にはすでに歌われており、待望の音源化として2ndアルバム『GRAPPLE THE WORLD』のラストに収録された「遥カナ航跡」。美しく儚げでいて温かさの残るこの楽曲の《こんな日がいつまで続くのか わからないけどいいんだよ》というサビのフレーズについて、コロナ前に書いたけど予言的に今自分で聴いて励まされるというmichi.と、音楽的に惹かれあって一緒に始めたけれど、何があるか分からないという当時の自分たちの関係性に重ね合わせたというKOJI。でも…サビだけでなく最初から最後まで、今この時に歌われるために綴られた言葉たちのようだと、感じてしまうのは私だけだろうか。4月17日、配信ライヴ『3rd Anniversary + KOJI生誕祭』の中盤で披露されたこの曲。事前に体力的な問題などでKOJIはステージには立たず、この日のために録音したギターの音をまるでそこで弾いているかのように鳴らすという彼が構築した“ツインギター自動演奏システム”での演奏が告知されていたため、ひとりでステージに立ち、口に出せないまま歌うmichi.のつらさと悲しみは計り知れない。《死ぬほど僕らは求め合い 同じ時代をえらんだよ》《命を掛けた証 ああ君とただ残したい》目を閉じて顔をくしゃくしゃにしながら歌う姿と、命の叫びのようなギターの音色、暗闇の中でそこにKOJIの魂が灯っているかのようなギターホールの光が胸を締めつける。michi.を見て、訃報のニュースに使用されていた写真が新しい衣装だったということに気づいて思ったのです、“ALICE IN MENSWEARのKOJI”として旅立ったんだな、と。強さとやさしさ、そして素敵な音楽をありがとう。そちらでも大好きなギターたくさん奏でてください。ゆっくり休んでね、KOJI。 TEXT:K子。 K子。 プロフィール:神奈川・湘南育ち。“音楽=音を楽しむ”ことを知り、好きな音楽の仕事がしたい!とOLをやめてオリコン株式会社に9年所属。旅行業界に転職後、副業で旅・エンタメ関連のWEBで執筆するも、音楽への愛が止められず出戻り人に。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。最近、最愛のバンドが復活してくれそうな気配にドキドキが止まらない。
OKMusic編集部