【40代・50代は知っておきたい】キッチンの壁掛け収納は、災害時に凶器となります
冷蔵庫の歩行を防止し、キッチンツールは引き出しへ
冷蔵庫も大きな地震の際には「歩き出しますよ」と辻さん。 「揺れによって冷蔵庫内のものが動くことで、冷蔵庫そのものが動きます。中の棚に滑り止めマットを敷くなどするのが有効です。また、キャスターの下には耐震マットをかませておくといいですね。 冷蔵庫と天井の間に隙間があると冷蔵庫が動きやすいので、市販の突っ張り棒を使うのも◎。段ボールなどを積んで天井までの空間を埋める手もありますが、上部から熱を逃がすタイプの冷蔵庫にこの方法は使えません。最近では壁に穴を開けずに冷蔵庫を固定できる固定具が主流になってきているので、検討してみてください」 キッチンで絶対に避けたいのが、調理道具の「壁掛け収納」。 「見た目はおしゃれですし、パッと手に取りやすいのもわかります。でも大きな揺れが突然来たら、それらはすべてあなたに向かって飛んでくると思ってください。 東日本大震災で被災地支援に入った際、菜箸が首に刺さって亡くなった方を見ました。菜箸ですら命を奪う凶器になるのですから、もっと尖ったものや硬いものならなおさら。キッチンツールは引き出しに収納するのがベストです。 防災は考えすぎるとどこから手をつけていいのか迷い、止まってしまいます。あれこれ頭で考えず、大事なのは一歩を踏み出すこと。物を買い足さなくてもできることから始めてみましょう」
【教えてくれたのは】 辻 直美さん 国際災害レスキューナース。一般社団法人育母塾代表理事。1991年、看護師免許取得。1993年「国境なき医師団」の活動で上海に赴任。帰国後、阪神・淡路大震災で実家が全壊したのを機に災害医療に目覚める。以降、国際緊急援助隊医療チーム(JMTDR)において国内外の被災地で活動。現在はフリーランスのナースとして講演、防災教育、被災地支援活動を行う。『レスキューナースが教えるプチプラ防災』(扶桑社)ほか、防災関連の著書多数。 イラスト/ミヤウチミホ 取材・文/遊佐信子