物価がずっと上がっているのに、年金はずっと「定額」なのでしょうか? 祖母が「このままじゃ暮らしていけない」とぼやいています。
老後生活の重要な収入源のひとつである老齢年金の給付金ですが、その給付額は定額ではなく、物価や現役世代の賃金が上昇した場合などには増額されることがあります。 しかし、その増加額は負担増に見合うものなのでしょうか? 本記事では、老齢給付の給付額を左右する「マクロ経済スライド」について解説していきます。 ▼夫婦2人の老後、「生活費」はいくら必要? 年金額の平均をもとに必要な貯蓄額も解説
老齢年金の仕組みは?
老齢年金には「老齢基礎年金」と「老齢厚生年金」があり、その給付金は主に現役世代が納めた保険料によって賄われています。現役世代と高齢者の人数、現役世代の賃金と物価水準によって給付額が変化するため、賃金と物価水準が下落した場合は、その下落分、給付額も引き下げられます。 一方で賃金・物価水準が上がると給付額も引き上げられます。直近で見ると、老齢基礎年金の給付額について、2023年度は月額6万6250円でしたが、2024年度は月額6万8000円と約2.7%増額されています。 一見、物価高は年金生活に影響はないように思われます。しかし、物価上昇率を見ると2023年度は2.8%増加しているため、実質的に使える金額は減少しており、年金生活者の家計にはマイナスの影響を及ぼしています。 年金水準が実際の物価高に追従していないのは、2004年から始まった「マクロ経済スライド」が関係しています。
老齢給付を左右するマクロ経済スライドとは?
私たちの年金給付額に影響を与えるマクロ経済スライドとはどのようなものなのでしょうか。 基本的に年金の給付金は、現役世代の納めた保険料が主な原資になっています。例えば、厚生年金保険料は賃金水準に応じた負担割合となっています。そのため、現役世代が多く平均賃金が高いほど年金財源は潤沢となり、年金受給者の現役時の所得の多くを年金で賄うことが可能になります。 しかし、現在の日本では、賃金上昇が長期間にわたって停滞した「失われた30年」の影響や現役世代が減り年金受給者が増える「少子高齢化社会」によって、年金の世代間格差が問題となっています。 このままの給付水準を維持した場合、将来の現役世代の負担が多大なものとなってしまいます。そこで賃金や物価が上昇した際、給付額の増額を抑えて緩やかに年金の給付水準を下げていくのが、マクロ経済スライドの仕組みです。 マクロ経済スライドは賃金・物価上昇が一定値を超えた場合にのみ発動し、賃金・物価の上昇が少ないときや下落した場合は行われません。