凶悪殺人犯が変身する異色「仮面ライダー」の今
若いお母さんが泣いている我が子に構わず握手
──当時は子供たちから怖がられたりしなかった? 萩野 ものすごく怖がられて泣かれたりもしましたが、必ずと言っていいほど若いお母さんが泣いている我が子に構わず握手を求めてくださったので、「まぁ、そうだよな~」と、悲しいやら、うれしいやらでしたね。「仮面ライダー」という日本の文化のような誰もが知っている作品に関わることができたのは幸せなことだと思います。 ──「仮面ライダー」シリーズがこれほど長く愛される魅力はどんなところにあると思う? 萩野 色々な要素があると思います。僕らの子供時代には“僕らのライダー”がいて、今の子供たちには“今のライダー”がいて…。また観たくなればDVDでいつでも、いつの時代のライダーにも逢えるわけですし。仮面ライダーはストーリーも深みがあり、子供だけでなく大人も楽しめて考えさせられるし、熱くさせてくれますからね。これからもずっと進化して、その時代、時代に合った仮面ライダーたちが続いて欲しいと思います。
本当に楽しくて、貴重な、かげかえのない時間
──現在はドラマや映画、舞台など幅広く活躍をしているが、特撮作品ならではの役者としての苦労、やりがいは? 萩野 人それぞれだと思いますが、「超光戦士シャンゼリオン」で僕の演じた涼村暁はどうしようもなく呑気で自分勝手な3枚目なんだけど愛嬌があって憎めないという役で。当時はなかなか演じるのが難しくて、スタッフの方に「なんでできないんだ!」と怒鳴られたりもしました。自分でも演じたいビジョンははっきりと持っているのに表現力が追いつかないことが悔しくて、恥ずかしながら最初の2ヵ月ほどは、現場で涙を流してしまったこともありました。そんな時に、優しく励ましてくださったり、少しでも良くなれば心からホメてくださるスタッフの方々には本当に助けられましたし、愛情を持って育ててくださったという実感はあります。あの現場で僕は役者としての基礎を作れたと感謝しています。振り返れば、本当に楽しくて、貴重な、かげかえのない時間でした。 ──昨年は7公演に出演するなど、最近は舞台活動にも精力的に励んでいるが、1月28日~2月1日に上演される舞台「春までの距離」では若手俳優たちとの共演となり、先輩俳優として育てていく立場となるが? 萩野 これまでは、すでにプロとして活躍している人たちに囲まれて一緒に作り上げていくという環境でしたが、今回の舞台は若手の人たちに囲まれてという環境の中で作品を作り上げていくという僕自身にとっても初めての公演になります。本来、僕は後輩の前でも先輩という態度は一切とりたくないんです。後輩でもプロの俳優という立場は同じですし、謙虚さや礼儀、誇りなども同じように持っていると思っているからです。でも、今回はお芝居だけでなく、そういったプロ意識という考え方、自分が昔教えてもらったことを若い人たちにも伝えていかなないと、という普段とは違った気持ちはあります。 ──稽古中も積極的に若い人たちにアドバイスをしていると? 萩野 今回は舞台が初めてという人もいるので正直、本人にじっくりと役について考えを掘り下げる時間まではないかなと思っています。稽古の中で伸びそうな人にはどんどん伸びてもらいたいし、小学生の子供もいるので、どうしたら上手く伝わるかということを常に考えながら接しています。自分もそうでしたが、若い人たちには、とにかく稽古に真剣に取り組んでもらい、泣いて、悔しい思いをたくさんしてほしい。それが必ず自分の成長や次に繋がるし、他の現場でも生きてくるし、その苦労の先に「演じることは楽しい」という感情があると思っているので。もちろん、僕もプロの演者として、また若い人たちのお手本になれるように頑張りたいと思っています。 ・萩野崇プロフィール 1991年デビュー。1996年「超光戦士シャンゼリオン」で主人公・涼村暁を演じ、2002年には「仮面ライダー龍騎」で仮面ライダー王蛇/浅倉威で出演。その後もドラマ・映画・舞台などに多数出演。2014年はドラマ「相棒12」「マルホの女」「匿名探偵」「フィッシャマンズ・ブルース」や舞台「青の祓魔師」「コロニー」「RUST RAIN FISH」「走れメロス」などに出演。 ・舞台「春までの距離」 日 時:2015年1月28日~2月1日 会 場:東京・新宿区中落合の「シアター風姿花伝」