総合格闘技「UFC249」が無観客で開催。視聴者も倍増し全米メディアも大会を評価した（写真・AP／アフロ）

総合格闘技の「UFC249」が9日（日本時間10日）、アメリカ・フロリダ州ジャクソンビルのVyStarベテランズ・メモリアル・アリーナで、UFCライト級暫定王座決定戦のトニー・ファーガソン（米国）対ジャスティン・ゲイジー（米国）、同バンタム級タイトルマッチの王者、ヘンリー・セフード（米国））対ドミニク・クルーズ（米国）の2大タイトル戦をメインに全11試合が無観客で行われた。 　前日の計量後のPCR検査でジャカレ・ソウザ（ブラジル）が陽性反応を示したために欠場。ソウザのセコンドにつく予定だったスタッフ2名も陽性反応が出たが、大会は中止されることなく無観客、スタッフが全員マスクを着用する中で強行された。この試合は、ESPN＋で放映されたが、PPV購入視聴者が、これまでの大会の倍になるという異常人気。ライブスポーツに渇望していた世界中の格闘ファンを楽しませる結果となり、全米メディアも批判より閉塞感を打ち破る大会の開催を評価する声が強かった。 　4月18日に開催予定だった「UFC249」は延期となり、紆余曲折を経てフロリダでの無観客試合での開催となった。 　おなじみのオクタゴンリングのバックは、真っ黒で、歓声もない異様な雰囲気で、選手、レフェリー、アナウンサー以外のスタッフはすべてマスクを着用。メインは、当初、ライト級王者、ハビブ・ヌルマゴメドフ（ロシア）対ファーガソン戦となる予定だったが、ヌルマゴメドフが、ロシアの新型コロナ対策で国境が封鎖されたため国外に出られずに、急遽、暫定王座戦となった。 　連勝中のゲイジーは強烈なパンチでファーガソンを血まみれにしてレフェリーがストップするという衝撃のKO勝利。試合後、「欲しいのは本物のベルトだ」と、ヌルマゴメドフとの統一戦を要求した。 　またセミファイナルでは、セフードが膝蹴りで挑戦者を倒すと、パウンドの嵐でTKO勝利。33歳のセフードは、試合後のインタビューで、この試合を限りに引退を表明するサプライズもあった。 　異様な無観客試合の様子をESPNは、「我々は対戦相手に当たった(パンチ、キックの）ショットの音のすべてを耳にした。コーチたちが、ボロボロになった選手たちから、少しでも力を引き出そうとしている声も耳にした。解説者の言う言葉が『オー』『アー！』としかなく、ファンとなっていたテレビ中継スタッフたちの声も漏れ聞こえた」と描写していた。 　デイリーメール紙によると、この大会を放映したESPN＋の有料放送購買者であるPPVの数字は前回のイベントに比べて2倍以上となっており、ダナ・ホワイト代表は、「信じられないペースで購入を得た」とコメント。 　7日の段階で、カナダやオーストラリアなど海外での事前購入者数は、UFC244、245、247、248の購買数に比べて倍増していたという。 　ちなみにUFC247は149万1000件、UFC248は119万5000件の事前購入があったというから、300万件を突破する勢いだったのだろう。 　同紙は、「プレミアリーグやチャンピオンズリーグといった欧州サッカー、NBAやMLBといった主要な米国スポーツのすべてが中断している中で、市民のスポーツへの渇望が大量販売につなだったのだろう」と分析した。 　全米メディアでは、UFCの強行開催を好意的にとらえる見解が多かった。すべてのプロスポーツが中止となり経済が停滞する中での再開を評価したのだ。