「澪を大人目線で守ってあげたくなる 」アニメ『下の階には澪がいる』坂本真綾が語る主人公の“不思議な”バランス
あざといけど子どもっぽさもある魅力的なヒロイン・澪
――アフレコ収録では、最終回だけ全員の声優陣がそろって、それ以外は坂本さんだけ別に収録したそうですね。 坂本 本当は一緒にアフレコ収録をした方がよいのですが、今回はどうしてもスケジュールが合わなくて。私は皆さんが録った音声を聞きながら演じたんです。どういう演技をしているか分かる状態で演じたので、すごく演じやすかったですね。澪はかわいくてフレッシュだけど、どこか妖艶な印象もある難しい役。皆さんの演技で、引き出していただきました。 それに正直、「1人でよかったな」とも思うときもあったんです。ドラマや舞台であれば、衣装を着て、姿かたちから役に入れますけど、アフレコって蛍光灯の下でいつもの自分のままマイクの前に立つし、役から離れて現実に引き戻されるのが早いんです。澪はセリフがすごくかわいくて、主人公の陽をドキドキさせる場面が多いから、現実に戻る時間が個人的にすごく恥ずかしくて。 今では、私と別収録だったからこそ、共演者の皆さんもかわいい澪から現実に引き戻されずに済んだんじゃないか、とさえ思います(笑)。 ――「あざとい澪」で印象的だったシーンはありますか? 坂本 いっぱいあるんですけど、セリフは普通なのに映像では陽の手を握っていたり、陽のファーストキスを奪った翌日に気まずい雰囲気で茶化したりするシーンは印象的でしたね。「なんで手を握るんだろう。普通に言えばいいのに」とか「自分のことを好きなのかわからない女の子に大事なファーストキスを奪われるのは、私だったら嫌だな」と思っていました。 でも澪は、ぐいぐいと迫るのにいやらしすぎない。あざといけど子どもっぽい悪ふざけの延長線にも思える、その塩梅が魅力的なキャラクターなんですよね。
SNSで受ける人の目とプレッシャー
――そんな澪に、坂本さんが共感した部分はありますか。 坂本 澪は芸能界に憧れていたけど、自分とは価値観の違う人たちとめぐり逢い、傷ついてアイドルを引退した女の子です。歌って踊ることが好きだったのに続けられなかった彼女の経験は、自分のことのように苦しく感じました。 今の時代は一般の方もSNSで自分をさらけだす時代ですけど、そこで受ける人の目とプレッシャーってすごく大きいんです。華やかな世界で目立つ存在になった澪は、きっと多くの視線にさらされる事実が、1人の人間として受け止めきれなかったんでしょう。でも、それも含めて「お仕事」なんですよね。 彼女の人生はこれからだから、夢と現実の重なるところを見つけていくのかな、と期待しています。大人目線で守ってあげたくなるというか、応援したくなりました。 ――作品では澪以外にも、陽と親密になる女性が2人出てきますが、共感したキャラクターはいましたか? 坂本 陽が合コンで出会う三国紗羅は、飲み会で会った時は派手な女の子に見えたけど、家では眼鏡をかけてカーラーを巻いている姿に親近感を覚えました。 それに陽の初恋の相手である桃井真珠(まこと)は、とにかくかわいくて「この子こそ、メインヒロインだよな」って思いましたね。ちょっと年上で、男性からも女性からも「あの子、良い子だよね」と言われるような非の打ち所のない女性です。 この作品の良いところは、恋のライバル同士の仲がいいことです。本当に素敵な関係性だなと思いながら観ていました。