今尾恵介(地図研究家)と福澤朗(フリーアナウンサー)が語る「鉄道地図の愉しみ方」【明治時代編】
日本の鉄道史を物語る究極の資料 鉄道地図を読み解く愉しさ
令和4年(2022)は、日本に鉄道が開業して150周年の節目となる記念すべき年。 これまでに発行された鉄道地図は、鉄道の歴史はもちろん、時代背景や、いつの時代も変わらぬ人々の旅への憧れを雄弁に語ってくれる。 動画はこちらから→今尾恵介(地図研究家)と福澤朗(フリーアナウンサー)が語る「鉄道地図の愉しみ方」【明治時代編】 今回は、鉄道に造詣が深く、テレビ番組で数々の古文書や地図に触れる機会の多いフリーアナウンサーの福澤朗さん(58歳)と、幼少期からの鉄道ファンで『日本鉄道大地図館』(小学館)の監修を務める今尾恵介さん(62歳)が、鉄道地図の奥深い魅力を語り合った。
福澤朗さん 1963年、東京都生まれ。1988年に早稲田大学第一文学部を卒業後、日本テレビ入社。アナウンサーとして数々のヒット番組に出演し、同局チーフ・アナウンサーを経てフリーアナウンサーに。趣味は鉄道のほか、日本酒、和菓子など。『開運!なんでも鑑定団』『鉄道沿線歩き旅』(テレビ東京系)など出演多数。
今尾恵介さん 1959年、横浜市生まれ。小学生~中学生の頃から地形図や時刻表に親しむ。出版社勤務を経て、1991年にフリーライターとして独立。地図や地形図、鉄道などの著作を数多く執筆。著書に『鉄道でゆく凸凹地形の旅』(朝日新書)など多数。『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)シリーズや、9月29日刊行予定の『日本鉄道大地図館』(小学館)の監修も務める。
今回、今尾さんが披露する鉄道地図には、現在では失われてしまった鉄路にとどまらず、時代背景を伝える様々な情報が記録されている。そんな貴重な地図を前に、テレビ番組で数々の“お宝”を目にしている福澤さんも、目を丸くして見入っていた。そんなふたりの対談は、昨今の鉄道事情の話題から始まった。 福澤朗さん(以下、福澤) 鉄道150周年という記念すべき年に、今尾さんと対談できて嬉しく思います。そんな節目の年に、今尾さんが注目している新しい列車や路線は、何かございますか? 今尾恵介(以下、今尾) そうですね。日本各地で災害や過疎化の影響で鉄路が失われるなど、さみしい話題も多いのですが、今年は武雄温泉駅(佐賀県)から長崎駅の間に西九州新幹線が開業します。また、来年に開業する初のLRT(軌道系交通システム)、宇都宮ライトレールも気になりますね。 福澤 僕は、10年後を目途に東京メトロ南北線が白金高輪から品川まで延伸されることが決まり、嬉しいですね。近隣に住んでいるので、延伸後は、品川駅から東海道新幹線に乗り降りすることになりそうです。品川駅はリニア中央新幹線の発着駅にもなりますし、ますます発展しそうですね。 今尾 品川駅は、平成15年に東海道新幹線が停車するようになってから、劇的に変わったんですよ。 福澤 余談ですが、外国人が一番好きな漢字は品川の“品”なのだそうです。というのも、四角が3つ並んでいる文字が珍しいのだとか。また、音の響きが“シンパシー(sympathy)”に繋がるからなのかもしれませんが、“新橋”が好きだと聞いています。両駅とも、鉄道の歴史を振り返るうえで重要な駅ですよね。 今尾 そうですね。新橋駅は長らく東海道本線の起点でしたし、品川駅は横浜駅と並ぶ日本最古の駅でもあります。品川駅から横浜駅間は、最近出土して話題になった高輪築堤の工事が遅れていたため、鉄道が本開業する2~3か月前に仮開業しました。 福澤 とある番組のロケで、品川駅から桜木町駅まで沿線を歩いたことがありますが、そのときに品川駅が最古の駅だと知りました。駅前に記念の石碑があるんですよね。 今尾 当時、浜松町駅から品川駅は波打ち際にあったそうです。東京湾に白帆の船が浮かび、房総半島も遠くに見えて、なかなかの絶景だったらしいですよ。 福澤 「鉄道唱歌」の1番に「愛宕の山に入り残る」というフレーズがありますが、新橋駅から品川駅にかけて、車窓に愛宕山が見えていたんですよね。約25~26mの小さな山で、今ではビルの陰に隠れてしまいましたが、当時は目立つ存在だったとわかります。あの頃の東京の町を見てみたかったですね!