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親友からの結婚祝いも捨てる妻…「地獄の束縛」に夫が耐えたワケ

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女子SPA!

朝から晩までメンタルケア

 この頃になると、仲本さんが仕事中の時も頻繁に志津さんから携帯にメールが届き、即レスを求められた。大半は自分の仕事の愚痴と普段の仲本さんの行動のダメ出しである。 「メールの着信があるたびに、次は何を要求されるんだろう、何をダメ出しされるんだろうと、動悸が止まらなかったです。朝から晩まで常に志津のメンタルケアをしなければならないので、気を抜ける瞬間がほとんどありませんでした」  日々をどのような心持ちですごしていたのか。 「いつ止むかわからない猛吹雪のなか、じっと黙って身を縮めているイメージです。妻からの暴言がマシンガンのように吐かれるたび、何度も意識が遠のくんですよ。このまま意識がプツっと途絶えたら楽なのにって、何度も思いました」  しかし仲本さんは、「一日のなかで唯一、自分の魂が自由になれる時間」があった。深夜である。

唯一の“精神の自由“は『倉庫番』

「彼女が隣で眠ったのを見計らい、布団に潜って汗だくになりながら、携帯電話で『倉庫番』をやっていました。無音で、画面を極限まで暗くして」 『倉庫番』とは、シンプルだが非常に硬派なパズルゲームで、当時はiアプリやEZアプリなどで提供されていた。アクションゲームではないので、頻繁にキー操作をしなくよい。将棋のように、じっくり腰を据え、音をたてずにプレイできる。こっそりやるにはうってつけなのだ。 「布団の中で息を殺して『倉庫番』をやっている間、“この指だけは自由だ”って、確かに思えたんです。ああ、僕は生きているって。ゲームごときに何をバカなと思ってますよね。でも、本当にそうだったんです」  バカなどとは到底思えなかった。仲本さんの口調があまりに真剣だったからだ。

指が自由に動くことの希望

「指が自由に動くということには、大きな意味があるんです。この苦しみを、この理不尽を、いざとなったらこの指で携帯に打ち込んで、文章にして、どこかに発信できる……かもしれない。いえ、発信する勇気なんてまるでなかったですが、発信できるかもしれないという可能性があるだけで、僕にとっては救いだった。毎日、寝る前の数十分間だけでも、自分は生きてるって感じられたんです」  アウシュビッツ、という言葉が浮かんだ。 「当時はそんな程度のことでも希望だったんですよ。この苦しみを誰にも伝えられないまま、いずれ僕が消えていく。そんな絶望に比べたら、指だけでも動かせるのは、遥かにマシだなって」

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