ハリルジャパンが苦肉の27人代表選出の理由とは?
長谷部と同じ図式が、トップ下もしくはインサイドハーフの香川真司(ボルシア・ドルトムント)にも当てはまる。6月7日のシリア代表との国際親善試合で左肩を脱臼した香川は、続くイラク代表とのアジア最終予選第8戦の欠場を余儀なくされた。 ドイツカップ1回戦で後半16分から、19日のヴォルフスブルクとの開幕戦では同41分から途中出場。コンディションを取り戻している過程であることを承知のうえで、今回のリストに加えられた。 実際、ハリルホジッチ監督も「彼の状態を直接見てどうするかを決めたい」と言及している。肉弾戦が避けられないオーストラリア戦でのプレーが難しいと判断されれば、柴崎や昨年11月以来の招集となった小林祐希(ヘーレンフェーン)の起用が考えられる。 3つのポジションに9人が招集されたフォワードは、さらに深刻な状況を抱えている。開幕前のキャンプで負った右足首のじん帯損傷からまだ復帰していない、ワントップ候補の大迫勇也(ケルン)について指揮官はこう言及した。 「別メニューを行っていたが、ここ1週間はトレーニングにも合流しているし、試合にも出そうだ」 日本代表チームのスタッフをドイツに派遣して、状態を確認させたうえでいわば見切り発車的に招集した理由は、それだけ大迫が代役の利かない存在になっているからだ。 懐の深さと体幹の強さを駆使して味方のために時間を作るポストプレーを演じられるのは、他には本田圭佑(パチューカ)しか見当たらない。しかも本田も右ふくらはぎに肉離れを起こし、23日にリーグ戦5試合目にしてようやくデビューを果たしている。 ヨーロッパよりも情報が入ってこない事情もあり、メキシコの本田のもとへもスタッフが派遣された。手元に置いて状態を直接確認する一方で、187センチ、79キロのサイズを誇る杉本を抜擢し、左ウイングだけでなくワントップもできる武藤嘉紀(マインツ)も約1年ぶりに復帰させた。 さらにつけ加えれば、最終予選で左ウイングのレギュラーに定着し、ハリルジャパンをけん引してきた原口元気(ヘルタ・ベルリン)も、開幕前のキャンプではチーム内で干されかけた。 プレミアリーグ移籍を希望する原口と、契約延長を提示してきたヘルタ・ベルリン側との間で確執が生じたためだ。ドイツカップ1回戦とシュツットガルトとの開幕戦はともに後半途中から出場したが、最終予選で見せたパフォーマンスを再び発揮できるかは現時点で未知数だ。 吉田麻也(サウサンプトン)と森重真人(FC東京)でほぼ固定されてきたセンターバックは、6月シリーズになって、吉田の相棒が常勝軍団・鹿島アントラーズで存在感を放つ昌子源に変更された。 ただ、新戦力を登用する努力を怠ってきたからか。2人のどちらかが不測のアクシデントに見舞われたときには、国際Aマッチ未経験の植田直通(アントラーズ)か三浦弦太(ガンバ)が代役となる。 不安を抱える長谷部、香川、大迫、本田、原口を招集するうえで、リスクマネジメントを施す必要もあって27人体制となった決戦シリーズ。センターバック陣の経験不足という不安要素も抱えながら、直前キャンプは27日から埼玉県内でスタートする。 (文責・藤江直人/スポーツライター)