大同特殊鋼、EV主機モータ用新磁石を来年中に量産体制確立。複雑形状可能、磁力方向自由でコスト競争力も
大同特殊鋼(社長・石黒武氏)は、今後需要増が見込まれるEV主機モータ(駆動用)用・高性能磁石の量産体制を来年中に確立する。独自の熱間加工磁石技術を駆使し、ディスプロシウムなどの重希土類元素フリーでコスト競争力が高く、モータのトルク・出力性能を大幅に高めた最先端の磁石を量産実用化することにより、2030年度をめどに年商を現在の2・5倍、500億円規模に拡大する。 同社の磁石事業は技術開発研究所が材料・プロセス基盤開発を行い、1990年にダイドー電子(本社・岐阜県中津川市、社長・天野肇氏)が量産実用化(当初は家電向けなど主体)を開始。最近は自動車向けが全体の約8割を占める。 今年5月に「中津川先進磁性材料開発センター」(センター長・松村康志技術開発研究所長)を設立。次世代モータ技術と、それを支える熱間加工磁石の研究、製造とモータの設計・評価の体制を中津川に集約した。 現在量産実用化に向けて取り組んでいる熱間加工磁石は、ナノレベルの微細な結晶粒を確保することでディスプロシウムなどのレアアースを一切使わずに高温でも高い保磁力を維持し、複雑な形状・配向制御(磁力方向を自由に決める)が可能な最先端の磁石。 この磁石を使えばEVのトルク性能が約10%増加するとともに、出力は20%以上向上する。主機モータの小型化にもつながる。 11日にセンター内を初めて公開。西村司副社長は新磁石の開発状況について、「製品開発は完了している。今後は実用量産化に向けたコスト競争力を磨くとともに、お客さまの動向もしっかり把握しながら提案活動を行い、1年後に量産化に入る」などと語った。