柳楽優弥が“普通の人”を演じる衝撃 『ライオンの隠れ家』は紛れもない新境地の予感
柳楽優弥がTBSドラマ初主演を務める金曜ドラマ『ライオンの隠れ家』が10月期に放送されることが発表された。 【写真】演技派同士で相性抜群の予感 『ライオンの隠れ家』で柳楽優弥の弟役を演じる坂東龍汰 是枝裕和監督作『誰も知らない』で史上最年少のカンヌ国際映画祭最優秀男優賞を受賞してからはや20年。これまで数々の作品で稀有な演技力を見せてきた柳楽だが、意外にもTBSドラマは本作が初主演。そして、本作で柳楽が演じるのは、「市役所で働く平凡で真面目な優しい青年」だという。ドラマ評論家の成馬零一氏は、「この役柄説明だけで柳楽さんを思い浮かべる人はいないのでは?」と語る。 「2021年に『二月の勝者-絶対合格の教室-』(日本テレビ系)で主演を務めていますが、“民放ドラマで活躍する俳優”というよりは、映画、あるいはNHKドラマに出演しているイメージの方が多いのではないでしょうか。というのも、柳楽さんは直近の出演作である『ガンニバル』(ディズニープラス)が象徴的ですが、振り切った人間の怖さを表現できる役者だからです。『ガンニバル』や映画『ディストラクション・ベイビーズ』はストレートに“怖い”役柄でしたが、そのほかの出演作でも、いい意味で普通ではない“なにか裏があるのではないか”という人間を演じています。それがコメディ作でもただの面白い人にはならずに、どこか人間の奥行きが感じられる形になっている。これは演技の上手い下手というものを超えて、その人本人にしか持ち得ないもののように思います。柳楽さんはNetflix映画『浅草キッド』でビートたけしさんを演じていましたが、まさに俳優・ビートたけしが持つ魅力とも重なります。だからこそ、『ライオンの隠れ家』で演じる“平凡で真面目な優しい青年”という主人公像は驚きでした。『出演するにあたって僕が惹かれたポイントは、ヒューマンドラマという点でした』(※)とコメントされているように、柳楽さんにとっても今挑戦したい役柄だったのではないでしょうか」 数々の代表作がある柳楽だが、「本作は紛れもない新境地になるのではないか」と成馬氏は続ける。 「柳楽さんのフィルモグラフィを振り返ると、各時代ごとにそのときの年齢でしか演じることができない役柄をしっかり選んでいる印象です。本作も30代半ばとなり、今の年齢の柳楽さんだからこそ挑戦できる役柄のように思います。本作をきっかけに朝ドラなどでも“父親”役を演じるような期待もありますし、柳楽さんの長い俳優人生の中でもターニングポイントになる役柄になるような気がしています」 柳楽優弥の持つ独特のオーラと高い演技力が、どのように「平凡で真面目な優しい青年」役に昇華されるのか。このドラマは、柳楽優弥という俳優の新たな魅力を発見する機会となりそうだ。
石井達也