細かなズレを修正して挑んだ全日本インカレ、中大はフルセットで専大に惜敗 柿崎晃主将「この先は、後輩たちに託します」
自ら流れを引き寄せた第3セット
1、2回戦は全日本インカレ特有の緊張感を味わいながらも、ストレート勝ちで3回戦へ。対するは、同じ関東1部の専修大学。トーナメントの怖さは、これまでの全日本インカレでも嫌というほど味わってきた。柿崎だけでなく、ともにコートへ立つ4年生の澤田晶(愛工大名電)、山根大幸(前橋商業)、山﨑真裕(星城)、村上連(松江工高専)も同じ悔しさを経験し、乗り越えてきた仲間だ。皆が皆、士気を高め、声も顔つきも明らかに今までの大会とは違った。 「自分が周りに対して特別な働きかけをする必要がないぐらい、みんな集中していたし気持ちも高まっていた。大丈夫だ、と思っていました」 だが、最後の大会に懸ける思いの強さは専修大の選手たちも同じだ。ましてや専修大は東日本インカレと秋季リーグで中大に負けている。失うものはないから攻めるだけ、とばかりにサーブで攻め、逆に攻め返しても屈せずに拾い、最後は日本代表でパリオリンピックにも出場した甲斐優斗(3年、日南振徳)に託した。中大は当然のようにブロックをそろえ、スパイクコースにはレシーバーが入ったが、甲斐はさらに上からたたきつけてきた。 両チームともに全力でぶつかり合う。1、2セットは攻撃で勝った専大が連取。勢いづく専大に対し、追い込まれた中大もひるむわけにはいかない。前半は専大に先行された第3セット、流れを引き寄せたのは柿崎だった。 17-17で迎えた場面での長いラリー。自らレフトからストレートに放ち、ブロックアウトを狙ったスパイクで18-17と勝ち越すと、右手をぎゅっと握り締め、胸の前でガッツポーズを作った。そのままサーブに下がり、的確にコースを狙ったサーブで攻撃を甲斐に絞らせたところ、尾藤大輝(1年、東山)がブロック。柿崎の得点ではなかったが、今度は両手でガッツポーズ。自身のスパイク得点以上に大きなアクションで喜びを表現した。 ここが勝負どころだとわかっていたのはもちろん、この1点がチームにとって大きな1点であることをキャプテンとして示してもいた。 「野澤監督や(アナリストの)鵜沼(明良、1年、駿台学園)からも自分(柿崎)が与える影響力はチームにとって大きい、と言われ続けてきたので、相手に2セットを連取されても、受けの姿勢や緊張した表情を出したらダメだと思い続けていました。あの1本はみんな『ここだ』とわかっていたので。自然に(ガッツポーズが)出ました」 3、4セットを取り返し、勝負の最終セット。1-3と先行されたが、舛本颯真(2年、鎮西)のサービスエースや山根のブロック、尾藤のバックアタックで7-4と逆転する。15点先取で3点のアドバンテージを得たが、専大も甲斐のバックアタックや竹内慶多(4年、啓新)のサービスエースで追い上げ、13-13。さらに甲斐のサービスエースで13-14、専大のマッチポイントとなった。 2度目のタイムアウトを経て、再びコートに戻り、甲斐のサーブが続く。柿崎はサーブレシーブをする舛本やリベロの土井柊汰(2年、東福岡)に声をかけ、自らレシーブしたボールを舛本が決めて14-14。ジュースに持ち込んだ。両者譲らないまま、意地と意地がぶつかり合う2時間超えの熱戦に決着をつけたのは、甲斐のスパイクだった。レフトから3枚ブロックを打ち破り、16-18。フルセットの末に専大が勝利した。 笑顔で抱き合いながら歓喜する専大の選手たちに対し、中大の選手たちは立ち尽くし、涙する。中大の、柿崎の全日本インカレが終わった。