細かなズレを修正して挑んだ全日本インカレ、中大はフルセットで専大に惜敗 柿崎晃主将「この先は、後輩たちに託します」
突然の幕切れ。フルセットの末に敗れた中央大学の選手たちは、呆然(ぼうぜん)と立ち尽くした。 【写真】専修大にフルセットで敗れた後、あふれる涙をこらえながらスタンドにあいさつへ向かう あの1本を拾えていたら。決めていたら。攻めることができていたら――。それぞれが押し寄せる悔しさをかみ締め、それでも受け入れきれず、ひざに手をつきうなだれる。あふれる涙を拭うこともできないまま感情をあらわにする選手たち一人ひとりのもとへ、最初に声をかけて回ったのは主将の柿崎晃(4年、北海道科学大高)だった。
強いだけでなく「いいチーム」を心がけた
自身は懸命に涙をこらえながら周りの選手たちをねぎらう。だがコートを引き上げ、野澤憲治監督に肩を抱き寄せられ、主将としての労をねぎらわれると、柿崎の目から涙があふれた。 「今年1年、ずっと日本一を目標にしてやってきたのに、最後の最後に届かなかった。もっと自分がどうにかすることができたんじゃないか。自分のサーブで攻めることができたら違う結果になったんじゃないか。悔しさと、後悔が込み上げてきました」 最上級生になった今季、自らキャプテンを志願した。サーブレシーブを含めたディフェンスの要であるだけでなく、苦しい時にも相手ブロックを利用したスパイクで着実に得点を挙げる。自らは「周りに積極的に声をかけて引っ張るタイプではない」と言うが、春季リーグ、東日本インカレの「二冠」を達成したチームを束ねたのは、間違いなく柿崎だった。 後輩からも同期からも「頼れる存在」「苦しいことも晃にだけは話せる」と全幅の信頼を寄せられた。最上級生だから、キャプテンだからと偉ぶることは一切なく、むしろ学年関係なく一人ひとりが意見を発しやすい環境をつくり、強いだけでなく「いいチーム」になることを心がけてきた。その結果、選手同士でコミュニケーションを取る機会が例年以上に増え、チームとしての結束力も強まった。勝利に対する貪欲(どんよく)さも増し、チームとしてどう戦うか。方向性が定まっている自信もあった。 細かなズレが生じたのは、夏が過ぎ、秋季リーグを迎えてからだ。「勝ってきた」という自信が気付かぬうちに慢心を呼び込む。なかなか勝てずに悔しさばかりを味わってきた時は、ひたすら勝利を求めて戦ってきたが、秋季リーグで日本大学や日本体育大学に敗れた後は、悔しさがありながらもどこかで「それでも春と東日本は勝ってきたから大丈夫」と余裕を見せる選手もいた。 このままではチームがまとまることなどできない。柿崎が呼びかけて4年生でミーティングを行い「大事なのはここからだから、気持ちを一つにしていこう」と活を入れた。秋季リーグは早稲田大学に全勝優勝を譲ったが、全日本インカレでリベンジを果たそう、と。再びチームが一つになって、最後の大会を迎えた。