知的障害のある両親から生まれた葛藤と、隠してきた過去 「もっと理解すれば良かった」後悔と共に感じる、支えてくれた恩人の大きさ #令和の子
友人たちに打ち明けた両親の障害
だが、結婚式の準備では悩みに悩んだ。周囲に両親の障害を隠していたからだ。「式には友人たちにも来てほしかった。でも、親はテーブルを回ってあいさつしなければいけない。母の障害をどう伝えればいいか分からなかった」と振り返る。 式の前に、一人ずつ友人たちに会って、両親のことを明かしていった。「どう思われるか」と心配しながら話したが、返ってきたのは「知っていたよ」と気にもとめないような返事。長年悩み続けた心境を察して、泣いてくれた友人もいた。 今は大学時代に学んだことを生かし、医療関係で働く。2人の子供に恵まれ、家族4人で幸せに暮らしている。「両親に障害がある家庭で育った自分に、子育ての仕方が分かるのか」。そんな不安もあったが、浜村さんたち周囲の助けもあって、仕事と家庭を両立しながら忙しい日々を送る。 子育てを経験して感じていることは、両親が「できない」ながら、愛情を注いでくれたことだ。感情を表に出すのが苦手だった母。逆に過剰なほどに愛情を表現してしまう父。「いろいろ子育てで分からないこともあったと思うけど、その中でも自分を育ててくれた。親のすごさを感じている」と振り返る。
「私のような存在に気付いて」
知的障害がある人の結婚や子育てを巡っては、かつて旧優生保護法で不妊手術を強制していた歴史がある。1996年に母体保護法に改正され、手術の強制は法律的になくなったが、2022年には北海道のグループホームで、結婚を希望する知的障害者が不妊処置を受けていた問題が発覚。日弁連は2023年に「不妊手術の強要や勧奨が相当数存在する可能性が高い」として全国調査を求める意見書を国に提出した。障害がある人の結婚や子育てへの視線は厳しく、サポートする仕組みは整っていないのが現実だ。 知的障害がある人は子どもを産んではいけないのか。田山さんは「そんなことはない」と話す。自身の存在を否定することにもつながるからだ。一方、複雑な気持ちもある。「私には幸い浜村さんがいた。長い人生を支え続けてくれる、彼女のような存在が必要だ。その子の良いところを伸ばしてくれるような人がいなければ、人生で大変な苦労をするんじゃないか」と心配する。