【高校野球】大谷翔平や佐々木朗希を凌駕する完成度の高さ 横浜高の1年生右腕・織田翔希はすでにドラフト1位の器
明徳義塾戦の前日、東洋大姫路と聖光学院の試合を視察した村田監督は、織田にある助言を授けている。 「東洋大姫路のエースの阪下(漣)くんがスピードを抑えて、天候を味方につけるようなピッチングをしていました(5回無失点)。帰ってすぐにミーティングで言いましたよ。『スピードじゃないよ』って。今日の織田はスピードを捨てて、130キロ台の球速でもしっかりとコースを突いて、145キロくらいのボールは要所だけ投げていましたね」 織田が「勝てる投球」に徹した背景には、阪下の存在があったのだ。 織田に自身の課題を聞いても「長いイニングを投げるための体力をつけたい」や「スライダーをもう少し速くして、キレを出したい」といった、やはり高校1年生らしからぬ内容が口をつく。 【織田が求める理想のボール】 強いて挙げれば、フィジカル面が今後の大きな課題になるだろう。ただし、織田の場合はまだ体を大きくできない事情もある。織田は「骨端線が閉じていないので、まだ背は伸びると思います」と語った。 人間は関節部分の「骨端線」が閉じると身長の伸びが止まり、大人の体になって筋肉がつきやすくなると言われる。あの大谷も高校時代は骨端線が閉じておらず、強い負荷をかけるトレーニングを避けていた。織田も「ウエイトトレーニングは骨端線が閉じるまではしません」と語っている。 今のところ肩・ヒジの故障歴もない。夢はふくらむばかりだ。 将来、どんなボールを投げてみたいか。織田に尋ねると、こんな答えが返ってきた。 「リリースから(捕手の背後にある)奥のフェンスまで、高さが変わらないまま『ズバーン!』といくような真っすぐを投げたいです。そのイメージには、まだ遠いですね」 現段階で織田の最高球速は150キロとも151キロとも言われる。どのスピードガンの数値を公式に最速とするかで、メディア媒体によって認識がズレているようだ。 だが、150キロだろうが151キロだろうが、織田という大器の物差しには到底ならない。「勝てる怪物」のほんの一要素でしかないからだ。 織田翔希の前途にはどんな物語が待っているのか。高校野球ファンには、あと2年も見守る時間が残っている。
菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro