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欧州最大都市・ロンドン封鎖の非現実感

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The Guardian

【記者:Barney Ronay】(この記事は2020年3月24日に配信された英文記事を翻訳したものです)  西欧最大の都市の中心でロックダウン(都市封鎖)に遭ったら、どんな感じだろうか? 上から見ると、確かにいつもとは違う。私はサウスロンドンで最も勾配のきつい丘の上に住んでいる。新型コロナウイルスの流行前は、頭に血が上った銀行員らが、まるでライムの木の周りを飛ぶスズメバチのように4000ポンド(約50万円)もするツーリング用自転車にしがみ付きながら通勤していた。  だがロックダウンの初日、いつもの丘には人っ子一人おらず、その下に広がる街には不気味な静けさが漂っていた。ここからは観光名所の大型観覧車ロンドンアイやセントポール大聖堂、北側にはマズウェルヒルの灰色のシルエット、そしてその間に広がるありとあらゆるポストモダンな高層ビル群が見える。ロンドン市内の車の往来や、ヒースロー空港とロンドン・シティー空港の滑走路の音も聞こえる。  しかし今日は違う。火曜日の朝に600万人がこんなに静かでいることなどめったにない。丘の上から見ると、ロンドンは待機モードに入っている。しかしもう少しじっくり見てみると、街の本体はまだ息をしており、通りには服従することのない都心の暮らしがみなぎっている。  ロンドン南部イースト・ダリッチにある通りロードシップ・レーンでは、人が3列に並んで歩き、惣菜店やチーズ店へと「必須の外出」をしている。店先を修理する施工業者もいる。「必須の」ジョギングをしているグループもいる。おかしなことに(これがおかしいと思えること自体がおかしいのだが)、テーブル席のあるフィッシュ・アンド・チップス店は営業中だ。  街中に近づくと、デンマーク・ヒルのラスキン公園では人々がサッカーに興じている。オールド・ケント・ロードでは、オルタナバンドのディーモブ・ハッピーのような格好をした若者たちがぶらぶらと歩いている。カンバーウェルはそこそこ混雑したラッシュアワーだ。かしこまってキングズ・カレッジ病院に入っていく国民保健サービス(NHS)の職員の大群。店の周りをうろうろしたり、公園の入り口に群がったりしている人々は、そのうちこのNHS職員たちが治療をすることになるかもしれない。  その言葉の定義をいかに広げたとしても、これはロックダウンと呼べる状態ではない。ロックされているものはほとんどないし、人々はそんなにダウンしている様子もない。ほこりをかぶっていたペスト法が500年の時を経て棚から取り出され、街角に戻されたのかもしれないが、それでもロンドンはまだ本当に気付いてはいないようだ。  今もまだここまでの急展開に対するショックがある程度、残っているのかもしれない。13日前には、スペイン・マドリードからの3000人を含む5万5000人が、リバプールでサッカーを観戦していた。3日前、人々はまだレストランやパブに群がっていた。  ロックダウン初日の今日でさえも路上市場のイースト・ストリート・マーケットは、鮮魚や果物を売る露店に吸い込まれていく買い物客でごった返している。人は生きるために食べなければいけない。だが、ここでは人と人の間の距離がほとんどない。  近くを走るウォルワース・ロードでは、建物の倒壊で警察や消防車が出動していた。たばこを一服したり、おしゃべりをしたりするためにちょっと屋外に出てきた住民が、好奇心旺盛な人だかりも作っている。ウイルス性気管支炎の季節にはよく見られるサウスロンドンの風物詩だ。

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